ぶんペットクリニックロゴ

ご予約はこちら
愛猫の乳腺腫瘍手術費用 - 獣医師が解説する治療戦略

愛猫のお腹に小さなしこりを見つけた時、飼い主さんは「これは何だろう?」「手術が必要なの?」「費用はどのくらいかかるの?」そんな不安を抱えると思います。そんな方々に向けて獣医師が猫の乳腺腫瘍について詳しく解説いたします。

猫の乳腺腫瘍の基本知識

猫の乳腺腫瘍は、乳腺組織に発生する腫瘍で、実に85~95%が悪性という特徴があります。これは犬の乳腺腫瘍の約半数が良性であることと大きく異なります。猫の場合、発見時には既に悪性である可能性が高いことを理解しておく必要があります。

発症年齢のピークは12歳前後ですが、9歳以降から発症率が増加し、稀ですが2歳での発症報告もあるため、年齢を問わず注意が必要です。また、猫の乳腺腫瘍はほとんどがメスですが、オス猫でも1~5%の割合で発症することがあります。

症状と早期発見のポイント

乳腺腫瘍の初期症状は非常に分かりにくく、小さなしこりが認められても元気だったり食欲に変化がないことがほとんどです。しかし、以下のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診することをお勧めします。

  • 乳腺部分に硬いしこりがある

  • しこりが複数個ある

  • 皮膚の表面が赤く腫れている

  • 乳頭から血液や膿のような分泌物が出る

  • しこりの表面が黒くボロボロになっている

特に重要なのは、転移率が50~90%と非常に高いことです。リンパ節や肺への転移率は83%、肝臓への転移率は25%、胸膜への転移率は22%とされており、早期発見が生存率に大きく影響します。

診断方法と検査の流れ

乳腺腫瘍の診断には、以下のような検査が行われます。

細胞診検査(FNA)

腫瘍に細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。猫へのストレスは最小限で済みますが、良性と悪性の正確な判断が困難な場合があります。

病理組織検査

確定診断のために腫瘍組織を詳しく調べる検査で、治療方針の決定に不可欠です。

画像診断

レントゲンやエコー検査により、転移の有無を確認します。特に肺転移の確認は治療方針を決める上で重要です。

手術方法と治療戦略

猫の乳腺腫瘍の治療は、外科手術が第一選択となります。治療方法は腫瘍の大きさや進行度により以下のように決定されます。

乳腺全摘手術

再発を防ぐため、腫瘍がある側の乳腺を全て切除する方法が推奨されます。猫の乳腺はリンパ管で全てつながっているため、部分的な摘出では再発リスクが高くなります。

両側乳腺全摘手術

腫瘍が両側にある場合や、再発予防のために行われます。通常は片側ずつ、約1ヶ月間隔で実施されます。

リンパ節郭清

転移が疑われる場合は、周辺のリンパ節も同時に切除します。

手術費用の詳細

多くの飼い主さんが最も気になる手術費用について、実際の相場をご説明いたします。

基本的な手術費用

  • 腫瘍部分摘出: 5~10万円

  • 片側乳腺全摘: 10~25万円

  • 両側乳腺全摘: 20~40万円

詳細な費用内訳

手術費用には以下の項目が含まれます。

  • 診察料: 1~2千円

  • 各種検査費用: 1.5~2万円

  • 手術料: 上記の通り

  • 入院費: 5千円~2万/日(通常3~5日間)

  • 麻酔料・モニタリング費用(施設による)

  • 病理組織検査費用: 2~3万円

動物病院により料金設定が異なるため、事前に詳細な見積もりを取ることをお勧めします。また、ペット保険に加入している場合は、基本的に術前検査費用・手術費用・入院費用などが適用対象となります。詳しくは加入しているペット保険会社にお問い合わせください。

術後の化学療法について

手術後、以下の条件に該当する場合は化学療法(抗がん剤治療)が検討されます。

  • 腫瘍の大きさが3cm以上

  • リンパ節への転移が認められる

  • 病理検査で悪性度が高い

化学療法の費用は1回あたり4~5万円とされており、少し高額です。また、通常は複数回の通院が必要になります。

予後と生存期間

腫瘍の大きさは予後に大きく影響します。

  • 2cm未満: 生存期間中央値3年以上

  • 2~3cm: 生存期間中央値15~24ヶ月

  • 3cm以上: 生存期間中央値4~12ヶ月

腫瘍が2cm未満に段階で発見することが大変重要です。2cm未満のしこりでは、猫ちゃん自身が痛みや違和感を覚えていないことも多いです。2cmを超えると、炎症が起こったり皮膚がただれたり食欲が減退するなどの症状が出てきて、生存期間も大幅に短くなります。そして3cm以上になると、ほとんどの場合で他の臓器への転移が発生し、治療をしたとしても術後1年以内に死亡してしまう確率は90%にもなります。

外科手術の範囲も予後に影響し、両側全切除→片側全切除→部分切除の順に予後が良好とされています。

予防の重要性

乳腺腫瘍の最も効果的な予防方法は、早期の避妊手術です。

  • 6ヶ月以下: 乳腺腫瘍発生リスク91%低下

  • 7~12ヶ月: 86%低下

  • 13~24ヶ月: 11%低下

1歳を超えてからの避妊手術では予防効果が著しく低下するため、生後6ヶ月までの実施が理想的です。

日常的なチェック方法

飼い主さんができる早期発見のための日常チェック。

  • 月1回程度、愛猫のお腹を優しく触診

  • 乳腺部分に小さなしこりがないか確認

  • 乳頭周辺の皮膚の状態をチェック

  • 異常な分泌物がないか観察

キャットリボン運動という、「猫の乳がん(乳腺腫瘍)で苦しむ猫をゼロにする」ことを目標に掲げた運動があります。その中では、月に一回猫ちゃんのお腹をよく触ってしこりがないかをチェックすることが推奨されています。小さなしこりでも「様子を見よう」という判断をすることなく動物病院にかかってみることが大変重要です。

まとめ

猫の乳腺腫瘍は早期発見・早期治療が何より重要です。手術費用は決して安くありませんが、愛猫の命を救うための必要な投資と考えるべきでしょう。

当院では、豊富な乳腺腫瘍手術の経験を持つ獣医師が、それぞれの猫ちゃんの状態に応じた最適な治療プランをご提案いたします。費用についても事前に詳しくご説明し、飼い主さんのご理解を得た上で治療を進めてまいります。

愛猫のお腹に気になるしこりを見つけた場合は、一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。早期の診断と適切な治療により、愛猫との大切な時間を少しでも長く過ごしていただけるよう、全力でサポートいたします。

 

解説・治療・当院の取り組み

arrow_circle_up