―犬の クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)ってどんな病気?
中高齢のワンちゃんで、
- お水をたくさん飲むようになった
- おしっこの量が増えた
- お腹がぽっこり出てきた
- 抜け毛が増えた or 毛が生えない
- 最近元気がない気がする
こんな変化を感じたことはありませんか? 実はそれ、「年のせい」ではなく、ホルモンの病気かもしれません。
そのひとつが、「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」です。
目次
🧠クッシング症候群とは?
クッシング症候群とは、副腎という臓器から分泌されるホルモン「コルチゾール」が過剰に分泌されることによって起こる、内分泌疾患です。
コルチゾールは、本来ストレスから体を守ったり、エネルギーを調整したりする重要なホルモンです。
しかしこのホルモンが過剰になると、逆に体に負担をかけ、さまざまな不調を引き起こします。
この病気は進行性で、放っておくと糖尿病や高血圧、免疫力の低下による皮膚感染などを引き起こす可能性もあります。
🔍原因は?どうして起きるの?
犬のクッシング症候群の原因は、主に以下の3つです。
① 下垂体性(PDH:pituitary-dependent hyperadrenocorticism)
脳にある「下垂体(かすいたい)」に小さな腫瘍ができ、ACTHというホルモンが過剰に分泌されます。
ACTHは副腎を刺激するホルモンで、結果的にコルチゾールが過剰に作られます。
- 全体の約80〜85%がこのタイプです。
- 両側の副腎が刺激されて大きくなるのが特徴です。
② 副腎性(AT:adrenal tumor)
副腎そのものに腫瘍(良性または悪性)ができ、コルチゾールを暴走的に分泌します。
- 約15〜20%を占めます。
- 片側の副腎だけが大きくなっていることが多いです。
③ 医原性(iatrogenic)
関節炎や皮膚病の治療でステロイド薬(プレドニゾロンなど)を長期にわたって使ったことが原因で、体内のコルチゾール濃度が異常に高くなった状態です。
- 薬剤の中止によって改善することもありますが、治療には慎重な調整が必要です。
🐕どんな犬に多いの?
クッシング症候群は、主に中高齢犬(7歳以上)に多く見られます。
特に以下の犬種に発症しやすい傾向があります。
- トイ・プードル
- ダックスフンド
- ビーグル
- ボストン・テリア
- ヨークシャー・テリア
- マルチーズ など
性別による差はあまりなく、どちらの性にも発症します。
🩺よくある症状
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 多飲多尿 | 水をよく飲む、おしっこの量と回数が増える |
| 腹部膨満 | 内臓脂肪がつき、お腹がぽっこりと出る |
| 脱毛 | 左右対称性の脱毛。特に胴体に多い |
| 皮膚の薄化 | 皮膚が薄くなり、血管が透けて見えることも |
| 筋肉量の減少 | 足腰が細くなり、散歩を嫌がる |
| 元気の低下 | 活動量の減少、睡眠時間の増加 |
| 皮膚感染 | 細菌やマラセチアによる皮膚炎を起こしやすい |
これらの症状は「加齢」と間違われやすいため、見逃されることも多い病気です。
🧪どうやって診断するの?
診断には、以下のような検査を組み合わせて行います。
■ 血液・尿検査
- 肝酵素(ALPやALT)の上昇
- 高コレステロール血症
- 希釈尿(比重が低い)
■ ホルモン検査
ACTH刺激試験
- 合成ACTHを注射して、コルチゾールの反応を見る
低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)
- ステロイドを投与し、正常に分泌抑制ができるかを評価
内因性ACTH濃度
- 原因が下垂体性か副腎性かを判別する指標
■ 画像検査
- 腹部エコー検査で副腎の大きさや形を見る
- CTやMRIで下垂体や副腎の腫瘍を詳細に評価する
💊治療方法について
■ 薬物療法
現在、最も一般的に用いられるのは「トリロスタン(商品名:アドレスタン)」です。
- 副腎のコルチゾール合成を抑制する薬
- 毎日の投与が基本
- 数週間おきに血中コルチゾール濃度のモニタリングが必要
※トリロスタンは副作用(無気力、嘔吐、低ナトリウム血症など)もあるため、慎重な用量管理が必要です。
■ ミトタン(オペ'DDD)
- 昔はよく使われていたが、現在は副作用が強いためあまり使用されません
- 副腎皮質の破壊作用があり、緊急性の高い副腎性クッシングで使われることも
■ 外科手術
- 副腎腫瘍が原因の場合、腫瘍を含む副腎を摘出することで根治が可能な場合も
- 麻酔リスクや術後のホルモン補充治療が必要
■ 医原性の場合
- ステロイド薬を段階的に減量・中止する
- 勝手な断薬は危険なため、必ず獣医師の指導のもとで行う
📈予後と管理
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療の有無 | 治療すれば多くの犬で生活の質が改善 |
| 治療継続の必要性 | 基本的に一生涯の投薬管理が必要 |
| 合併症の予防 | 皮膚炎、糖尿病、高血圧、血栓症などの早期発見が重要 |
🔁 モニタリングがカギ
✔ ACTH刺激試験:治療開始後10〜14日目に再評価
✔ 電解質バランスや肝酵素の測定
✔ 定期的な尿検査・超音波検査
✔ 飼い主さんによる飲水量・食欲・体重の記録
🐾飼い主さんにできること
✔ お水をどれくらい飲んでいるか毎日メモする
✔ 元気の有無、皮膚の様子、体重を定期的に写真で記録
✔ 治療後も症状がぶり返していないか、違和感を感じたらすぐに相談
✔ 処方薬の飲み忘れや急な中止は絶対NGです
✅まとめ
✔ クッシング症候群は高齢犬に多い慢性ホルモン病
✔ 早期発見・早期治療で生活の質を維持できる
✔ 投薬管理は一生続くが、日常生活を穏やかに過ごすことが可能
✔ 気になる症状があれば、すぐに動物病院で検査を!
大切な愛犬が、毎日を元気に快適に過ごすために。
正しい知識と早めの対応が、飼い主さんの一番のサポートになります。
気になる症状があれば、お早めに当院までご相談ください。
早期発見が愛犬の健康寿命を延ばす第一歩です。
