犬の短頭種気道症候群(BOAS)について
目次
1. 短頭種気道症候群とは?
短頭種気道症候群(Brachycephalic Obstructive Airway Syndrome, BOAS)は、鼻先の短い犬種に多く見られる呼吸器疾患です。
鼻の穴や軟口蓋、気道の形態的な異常が原因で空気の通り道が狭くなり、慢性的に呼吸がしづらい状態になります。
放置すると進行し、重度の呼吸困難や失神、熱中症などを引き起こし、最悪の場合は命に関わることもあります。
2. 好発犬種
この症候群は、いわゆる「短頭種」と呼ばれる犬に多く発生します。
代表的な犬種には以下があります。
✔ パグ
✔ フレンチ・ブルドッグ
✔ ブルドッグ
✔ シーズー
✔ ペキニーズ
✔ ボストン・テリア
✔ チワワ(短頭型)
3. 原因と発生メカニズム
BOASは、複数の先天的形態異常が重なって発症します。
■ 鼻孔狭窄
- 鼻の穴が非常に狭い
■ 軟口蓋過長・肥厚
- 軟口蓋が長すぎて喉にかぶさる
■ 喉頭小嚢反転や喉頭虚脱
- 喉頭の構造物が変形・沈下
■ 気管形成不全・虚脱
- 生まれつき気管が細い、潰れるなど
これらにより吸気時の空気の通過抵抗が増し、努力呼吸が続くことで喉や気管に慢性的な負荷がかかり、二次的な病変(浮腫、炎症、虚脱など)が進行します。
4. 主な症状
初期には軽いいびきや呼吸音の増加だけですが、進行すると以下のような症状が現れます。
✔ いびき・ガーガーといった呼吸音
✔ 口を開けての激しい呼吸
✔ 運動時や興奮時の呼吸困難
✔ 睡眠中の無呼吸
✔ チアノーゼ(舌や歯茎が青紫になる)
✔ 咳、嘔吐、食欲低下
✔ 運動を嫌がる、すぐに疲れる
「この犬種はこういう呼吸だから」と思って見過ごすと、悪化してから気づくケースも多い疾患です。
5. 診断
外見上の特徴(鼻孔の狭さ)や呼吸音からある程度は推測できますが、正確な診断には以下が用いられます。
✔ 視診・触診による鼻孔の確認
✔ 聴診による呼吸音の評価
✔ X線検査(気管や軟口蓋の評価)
✔ 麻酔下での喉頭内視鏡検査(軟口蓋や喉頭の状態確認)
避妊・去勢手術の際に麻酔を利用して検査を行うこともあります。
6. 治療法
■ 外科治療
根本的改善には外科手術が必要です。
若齢期(6か月〜4歳程度)に行うことで、症状の進行を抑えられる可能性が高まります。
- 鼻孔拡張術(狭い鼻孔を広げる)
- 軟口蓋切除術(長すぎる軟口蓋を切る)
- 重度の場合は永久気管開口術
短頭種は麻酔時の呼吸関連のリスクが通常よりも高く、手術後の呼吸管理が重要です。
■ 内科治療・生活管理
薬物だけで完治はできませんが、軽症例では以下のような生活改善で症状を緩和できます。
- 室温を涼しく保つ(熱中症予防)
- 肥満防止(余分な脂肪は気道を圧迫)
- 激しい運動や興奮を避ける
- 夏場や湿度の高い日の散歩を控える
7. 予防と飼育のポイント
遺伝的要因が強いため完全な予防は困難ですが、早期発見・早期治療が鍵です。
✔ 子犬のうちに呼吸音や鼻孔の形を獣医師にチェックしてもらう
✔ 気になる症状があれば早めに手術の適応を相談する
✔ 体重管理と温度管理を徹底する
✔ 短頭種に詳しい動物病院をかかりつけにする
8. まとめ
短頭種気道症候群は、見た目の可愛らしさの裏に潜む深刻な呼吸器疾患です。
軽い症状でも放置せず、日常の観察と適切な医療介入で、愛犬の呼吸と生活の質を守ることができます。
ぜひご相談ください。
