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犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)とは|症状と治療を解説

犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)について

愛犬が散歩の途中で突然、後ろ足を軽く跳ね上げるようにケンケン歩きを始めた――そんな仕草を「ちょっとしたクセかな?」と見過ごしていませんか。

実はこの動作、膝蓋骨脱臼(パテラ)という膝のお皿が外れる病気の典型的なサインの一つです。

小型犬に多く見られる疾患ですが、放置すると関節炎や前十字靭帯断裂など、より深刻なトラブルへ発展するおそれがあります。

本記事では、臨床現場で日々診療にあたる獣医師の視点から、膝蓋骨脱臼のしくみ・見分け方・診断手順をわかりやすく解説し、症状や生活環境に応じて選択すべき温存療法と外科手術の適応を整理します。

さらに、飼い主さんが今日から実践できる体重管理やリハビリのコツまで網羅。

ネット上にあふれる断片的な情報では得られない“ひざのお皿外れ”の全体像を、ここで一緒に押さえていきましょう。

 

 

 

 

1. そもそも膝蓋骨脱臼とは何か

膝蓋骨(しつがいこつ、いわゆる“ひざのお皿”)は、大腿骨の溝(滑車溝)の中を上下しながら膝をスムーズに曲げ伸ばしさせる滑車の役割を果たします。

脱臼は、この皿が溝から内側(内方脱臼)または外側(外方脱臼)へ外れてしまった状態です。

項目 内方脱臼 外方脱臼
好発犬種 小型犬(トイプー、チワワ) 大型犬・超小型犬
主因 先天的骨格アンバランス 外傷・骨格変形
臨床像 “ケンケン”→すぐ歩く、O脚ぎみ X脚となり、機能障害が強い、歩幅が不揃い

 

 

2. 発生メカニズムを簡単にイメージ

骨のねじれ/溝が浅い

生まれつき溝が浅いと皿が外れやすい。

筋肉と靭帯の引っぱり角度がズレる

脛骨の前面(脛骨粗面)が内側に寄っていると、膝蓋靭帯が皿を内側へ引っぱる。

繰り返し脱臼→二次変形

外れたり戻ったりを放置すると、軟骨が摩耗 → 溝はさらに浅く → “負のスパイラル”となります。

 

つまり、「骨格」「靭帯の引っぱり方向」「筋肉のバランス」の3つがズレた結果、皿が正しいレールを走れなくなると覚えておきましょう。

 

 

3. グレード分類(I〜IV)と“暮らしへの影響”

グレード 脱臼の状態 生活上のサイン 飼い主がすべきこと
触れば外れる/自然に戻る 無症状〜たまに「カクッ」 体重管理・床の滑り止め
しばしば外れるが自力で戻る ケンケン数歩→普通歩行 動画を撮って経過観察
ほぼ常時外れているが手で戻る ぎこちない歩様、内股 手術を視野に検査準備
完全に外れ固定 跛行・座り方異常 早期手術+リハビリ計画

注意: グレード=X線での形態と触診での外れやすさ。

痛みの強さと必ずしも一致しません。

 

 

4. 診断プロセス ― “見て・触って・写して” が基本

ステップ 目的
歩様観察 跛行パターン・ケンケン頻度をチェック
触診 膝蓋骨の横ブレ・靭帯の張り、痛みの有無を評価
レントゲン(静止・屈伸像) 骨の曲がり具合、関節炎の有無、関節液の貯留の有無を評価

※CTやMRIは深刻な骨変形や合併症が疑われる場合のみ選択肢に入ります。

 

 

5. 保存療法(温存) ― 手術しない場合にできること

カテゴリ 具体策
体重管理 ◇ 理想体重を目標に減量
◇ 高タンパク・低脂肪食
生活環境 ◇ フローリング全面にマット
◇ ソファに階段設置
リハビリ ◇ 坂道ゆっくり散歩(5〜10分)
◇ 起立とお座りを繰り返す(10回×朝夕)
◇ 関節の曲げ伸ばし(10回×朝夕)
投薬・サプリ ◇ NSAIDs(痛みが強い時)
◇ グルコサミン・EPAなど

保存療法のゴール

✅ 痛みを許容範囲まで下げる

✅ 関節炎の進行を遅らせる

✅ “いざ手術”の時に筋肉量を保って回復を早める

※リハビリやその他保存療法については、獣医師の指示のもと実施する必要があります

 

 

6. 外科療法の適応と代表術式

6-1 手術を考えるタイミング

1. グレードⅢ以上(常時外れる)

2. グレードⅡでも

✅ ケンケン頻度↑

✅ 痛みで遊びを中断

✅ 前十字靭帯の断裂が疑われる

3. 若齢で骨格変形が進行中(成長板が閉じる前に矯正した方が良好)

 

6-2 3本柱の標準術式

術式 目的 ポイント
滑車溝造溝術 溝を深くして皿の“走行レール”を再建 軟骨を温存する楔状・ブロック造溝が主流
脛骨粗面転移術(TTT) 靭帯の“引っぱり角度”をまっすぐに修正 金属ピンやスクリューで新位置に固定
軟部組織調整 伸びた外側組織を縫縮、縮んだ内側組織を解放 “綱引きのバランス”を取り戻す

術後の合併症を防ぐ鍵は「溝の深さ」「靭帯角度」「軟部組織張力」の3点セットを一度に整えること。

個々の状況に合わせて微細な調節が必要となります。

 

 

7. よくある質問(FAQ)

質問 回答のポイント
痛みがなくても手術すべき? “無痛=無害”ではありません。常時脱臼→軟骨摩耗→前十字靭帯断裂の連鎖リスクを評価します。
サプリだけで治りますか? 治療ではなく栄養補助的な立ち位置です。今後の関節炎や機能障害への進行を極力抑えるためのものです。
高齢犬の麻酔が心配 術前に血液・エコー・胸部X線等で臓器リスクを評価します。年齢より“内蔵機の機能”が重要です。

 

 

8. まとめ ― 迷ったら“記録”と“相談”

動画で歩様を記録し、診察時に提示する

体重・ケンケン回数・痛みサインを日誌化

✅ グレードⅡ以上または生活に支障が出たら手術の時期を獣医師と相談

 

 

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