目次
1. はじめに
猫の動脈血栓症(Feline Arterial Thromboembolism, FATE)は、
血栓(血の塊)が動脈内で詰まり、血流を遮断することで発症する重篤な疾患です。
特に肥大型心筋症(HCM)などの心疾患を持つ猫に多く見られ、突然の後肢麻痺や強い痛みを引き起こすことが特徴です。
本記事では、猫の動脈血栓症の原因・症状・診断・治療について詳しく解説し、飼い主が知っておくべきポイントを紹介します。
2. 動脈血栓症の原因
動脈血栓症の主な原因は、心疾患による血流の乱れと血液の凝固異常です。
■主な原因疾患
1. 肥大型心筋症(HCM)
最も一般的な原因で、心臓内に血栓が形成されやすくなる
2. 拡張型心筋症(DCM)
心臓の収縮力低下により血流が滞り、血栓ができやすくなる
3. 拘束型心筋症(RCM)
心臓の拡張機能が低下し、血流の停滞が起こる
4. 甲状腺機能亢進症
血圧上昇により血栓形成のリスクが高まる
5. 各種腫瘍疾患
腫瘍の影響で血液凝固の異常を引き起こすことがある
3. 動脈血栓症の症状
動脈血栓症の症状は、血栓がどの動脈に詰まるかによって異なりますが、多くの場合、後肢の動脈(大動脈の分岐部)が閉塞されるため、以下のような症状が見られます。
■主な症状
✓ 突然の後肢の麻痺または脱力
✓ 強い痛み(鳴き声を上げる、極度の苦痛)
✓ 後肢の冷感(血流が途絶えるため)
✓ 後肢の肉球や爪が青紫色に変化
✓ 呼吸が荒くなる(心疾患を伴う場合)
血栓が他の動脈を塞ぐ場合、前肢の麻痺、腎不全、消化器症状なども引き起こされることがあります。
4. 診断方法
動脈血栓症の診断には、臨床症状と画像診断が重要です。
■主な診断方法
1. 身体検査
四肢の温度や色をチェックし、脈拍の有無を確認
2. 血液検査
血栓形成のリスク因子(Dダイマー、凝固因子)を評価
3. 心エコー検査
心疾患の有無、左心房の拡大、心内血栓の確認
4. 超音波検査(ドップラー検査)
血流の異常を評価し、動脈閉塞の有無を確認
5. X線検査
心臓の肥大や肺水腫の有無を確認
5. 治療方法
動脈血栓症の治療は、緊急対応と血栓溶解・再発予防が重要です。
5-1. 急性期の治療
1. 鎮痛剤の投与
(モルヒネ、ブプレノルフィンなど):強い痛みを和らげるために使用
2. 抗凝固療法
(低分子ヘパリン、ヘパリンなど):血栓の進行を防ぐ
3. 血栓溶解療法
(t-PAなど):血栓を溶解するが、リスクが高く慎重な適応が必要
4. 酸素療法
呼吸困難がある場合に実施
5. 循環サポート
心疾患に伴う血行動態の管理
5-2. 慢性期の管理・再発予防
1. 抗血栓療法
1. クロピドグレル(プラビックス)
血小板凝集を抑制し、再発予防に効果的
2. アスピリン
低用量で使用されるが、クロピドグレルより効果が劣るとされる
2. 心疾患の治療
1. β遮断薬(アテノロール)
心拍数をコントロール
2. ACE阻害薬(エナラプリル)
心臓の負担を軽減
3. 生活管理
ストレスを避ける環境を整える
適切な体重管理と栄養バランスの取れた食事
6. 予後と注意点
脈血栓症の予後は血栓の部位、治療のタイミング、基礎疾患の有無によって異なります。
6-1. 予後のポイント
1. 早期治療が鍵
発症後6時間以内に治療を開始すると生存率が向上
2. 再発率が高い
再発率は50%以上で、抗血栓療法が不可欠
3. 慢性管理が重要
基礎疾患(HCMなど)の管理が生存期間を延ばす
6-2. 飼い主様ができること
1. 定期的な心臓検査(心エコー)を受ける
2. 呼吸数や四肢の状態を日常的に観察する
3. 異常があればすぐに動物病院を受診する
7. まとめ
猫の動脈血栓症は、心疾患に伴って発生しやすい深刻な疾患であり、早期発見と迅速な治療が鍵となります。
• 肥大型心筋症(HCM)などの心疾患が主な原因
• 後肢の突然の麻痺や冷感、強い痛みが特徴的な症状
• 確定診断には心エコー検査やドップラー検査が有効
• 治療には鎮痛剤、抗凝固療法、心疾患管理が不可欠
• 再発リスクが高いため、継続的な抗血栓療法が推奨される
愛猫の健康を守るために、定期検診と日頃の観察を欠かさず行いましょう!
当院は、岡崎市上和田町にある動物病院です。心臓病の診断や治療に力を入れております。
岡崎市周辺にお住まいの方はぜひ当動物病院にご相談いただけたらと思います。
