短頭種気道症候群とは
皆さんは、短頭種気道症候群というものを知っていますか?
短頭種気道症候群は、フレンチブルドッグやパグなどの"短頭種"に見られる呼吸器の障害を指す総称です。短頭種は、鼻や口の構造が短くなっているため、空気の通り道が狭くなりやすく、呼吸が苦しくなりやすいという特徴を持っています。
短頭種気道症候群って何?うちの子の呼吸は大丈夫?治療を考えているけど、実際どんな治療なの・・・?
本記事では、そんな短頭種気道症候群にまつわる疑問を解消するべく、概要を解説するとともに、治療方法や、日常のケアまで詳しく説明したいと思います。
本記事では、以下の内容に沿って解説します。
・短頭種気道症候群とは
・短頭種気道症候群になりやすい犬種や猫種
・短頭種気道症候群の主な症状
①鼻の鳴り音やいびき
②呼吸困難
③過度の粘液分泌
④意識喪失
・原因となる具体的な生体構造
①狭窄した外鼻孔
②長い軟口蓋
③狭い気道
・短頭種気道症候群のリスクと合併症
①運動時の呼吸困難
②高温・多湿環境での危険性
③気管虚脱や肺炎のリスク
・診断方法
①獣医師による診察
②レントゲン検査
・治療とケア
①内科治療
②外科治療
③手術のリスク
④日常のケア
・飼い主としての予防と注意点
・まとめ
この記事を読めば、きっとあなたも短頭種気道症候群のことがよく分かるはずです!
短頭種気道症候群とは
短頭種気道症候群とは、"短頭種"に特有の鼻や口の構造によって起こる、呼吸器の症状の総称を指します。鼻が短く、特徴的で可愛らしい特徴の反面、短頭種の動物は、その特徴的な顔の形状のために、鼻の通路が狭くなり、また、口の中の空間も限られています。これにより、呼吸をする際の空気の流れが制限され、酸素を効率よく取り入れることが難しくなります。さらに、軟口蓋が長くなっていることも多く、これが気道をさらに塞ぎこみ、呼吸の障害を引き起こす原因となります。
短頭種気道症候群になりやすい犬種や猫種
短頭種気道症候群がよく見られる犬種としては、ブルドッグ、パグ、シーズー、ボストンテリア、フレンチブルドッグなどが挙げられます。猫では、ペルシャ猫やエキゾチックショートヘアなどの短頭種が該当します。
短頭種気道症候群の主な症状
①鼻の鳴り音やいびき
この症状は、狭い鼻の通路や過剰な軟口蓋が原因で起こります。動物が息をする際、気流が制限されることで、特有の鼻の鳴り音やいびきのような音が発生します。特に、休息時や睡眠中にこのような音が強くなることが多いです。短頭種であれば、少なからず、鼻の鳴り音やいびきがあることも多いですが、短頭種気道症候群では、度を超えてこれらの症状が認められることがあります。
②呼吸困難
短頭種気道症候群では、十分な空気の流入が制限されるため、呼吸困難を起こすことがあります。これは、運動後や暑い日などに特に顕著になります。運動時には、酸素の消費量が増加するため、必要酸素量が増加し、制限されてた呼吸では、十分に酸素が賄いきれなくなることがあります。
③過度の粘液分泌
呼吸困難や口からの過度な呼吸が原因で、過度な唾液を分泌することがあります。呼吸困難となると、交感神経が活性化し、唾液の分泌が亢進します。過度な唾液分泌によって、喉が詰まり、誤嚥を起こしたり、呼吸困難が悪化したりすることがあり、注意が必要です。
④意識喪失
最も重度の症状として、酸欠状態となり、最終的に意識を失うことが考えられます。これは、失神という状態で、非常に危険な状態であり、緊急の医療対応が必要となります。失神の前兆候として、チアノーゼ(舌が青くなる)が認められることがあります。もし、チアノーゼが認められた場合は、失神に至らないとしても、かなりの呼吸障害があると考えられますので、要注意です。
原因となる具体的な生体構造
①狭窄した外鼻孔
鼻の穴のことを、外鼻孔と呼びます。短頭種の動物の多くは、狭い外鼻孔を持っています。これは、外気を取り込む際の主要な入口が制限されるため、呼吸がしづらくなります。特に活動的な際や暑い日には、この狭い鼻孔だけでは十分な酸素を取り込むのが難しく、口からの呼吸に頼らざるを得なくなります。
②長い軟口蓋
軟口蓋は、口の奥と鼻の奥を分ける柔らかい組織のことを指します。短頭種の動物では、この軟口蓋が通常よりも長くなっており、これが気道に干渉することがあります。特に、呼吸時にこの長い軟口蓋が喉の奥や気道に入り込むことで、空気の流れが阻害され、鼻の鳴り音やいびき、さらには呼吸困難を引き起こすことがあります。
③狭い気道
短頭種の動物は、気道自体も狭いことが特徴的です。同じ体格の、短頭種でない、動物と比べて、気道が細いため、深呼吸をしようとした際や、急激に酸素を必要とする状況で、効率的な呼吸が難しくなっています。また、努力性の呼吸(呼吸をするのに、全身の力を使う状態)が長期的に続くと、気道内圧が陰圧になる結果、気管が潰れやすくなり、気管虚脱という、気管が常に潰れた状態になることがあります。気管や気管支の虚脱が重篤化すると、後述する外鼻孔拡張や、軟口蓋切除の手術では、治療が難しくなってしまいます。
短頭種気道症候群のリスクと合併症
①運動時の呼吸困難
短頭種では、運動する際に特に呼吸困難を示すことがあります。これは、身体が活動することで必要とされる酸素量が増加するのに対し、狭窄した鼻孔や狭い気道、長い軟口蓋により効率的な酸素取り込みが難しくなるためです。したがって、激しい運動や長時間の散歩は避けるよう努めることが推奨されます。
②高温・多湿環境での危険性
暑く湿度の高い環境は、短頭種の動物にとって特にリスクが高まる状況です。犬はパンティングによって、唾液中の水分を気化することによって、主に体温を調節しています。高温多湿の環境下では、体温調節をするために、呼吸の必要性が増し、呼吸困難を引き起こす可能性があります。また、呼吸が制限されている短頭種では、体温調節も苦手なため、熱中症にも注意が必要です。特に夏場の直射日光の下や車内など、高温環境には十分な注意が必要です。
③気管虚脱や肺炎のリスク
短頭種気道症候群を持つ動物は、呼吸の通り道が狭いために、呼吸をするのにより大きな力を必要とします(努力性呼吸)。力強く呼吸するため、胸腔内が強い陰圧になりやすいという特徴があります。この陰圧によって、気管が潰れる結果、徐々に、難治性の気管・気管支虚脱になってしまうことがあります。また、頻繁に呼吸困難症状が続くと、気道や肺に異物や細菌が侵入しやすくなるため、誤嚥性肺炎などのリスクも高いと考えられます。
診断方法
①獣医師による診察
獣医師による診察では、動物の呼吸の様子や鼻の鳴り音、いびきの有無、また口腔内の観察などを行っていきます。そして、現在の症状が、短頭種気道症候群の典型的な症状に合致しているかどうかの判定を行います。また、そのほかの呼吸器の異常や、その他全身状態が問題ないかどうかの確認も合わせて行います。
②レントゲン検査
さらに詳しい診断のために、レントゲン検査が推奨されることがあります。レントゲン検査によって、軟口蓋の長さや、気道や肺、鼻腔の構造を詳しく評価します。特に、気道の狭窄度や肺に異常がないか、また他の合併症が発生していないかを確認するためには、レントゲン検査は非常に有用です。気管虚脱の有無を調べるために、吸気時と呼気時のレントゲン画像を比較して評価することもあります。
治療とケア
①内科治療
内科治療では、内服薬や酸素吸入を実施します。主に、炎症や浮腫を抑えるステロイドや、気管拡張薬、去痰剤などを組み合わせることで、呼吸困難の軽減や、症状の安定化を目指します。特に、外科が難しい場合には、呼吸症状に対する中心的な治療になります。また、重度の呼吸困難の際には、酸素ゲージやマスクを使用して酸素吸入を行うことで、一時的な呼吸の安定化を図ります。入院下で酸素吸入を行うこともあれば、頻繁に呼吸困難となる場合に、自宅に酸素ゲージやマスクを準備して実施していただく場合もあります。一方で、内科治療では根本的な解決は難しく、また、症状が重度の場合は、内科治療で限界があることもあります。外科治療で改善が見込まれる場合は、外科治療が推奨されます。
②外科治療
外科的な治療は、短頭種の持つ構造的な問題を解決するために、実施します。
・軟口蓋切除
軟口蓋が長いと、気道を塞いでしまうため、それを一部切除することで、呼吸の障害を軽減します。レーザーや電気メスで切除、焼烙した後、必要に応じて、吸収糸で縫合します。糸は自然に吸収されていくため、別途抜糸は不要です。
・外鼻孔拡大
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狭窄した鼻孔を外科的に拡張し、酸素の取り込みを向上させることで、呼吸困難の軽減が期待されます。鼻の正面部分を一部切開し、縫合糸で縫い合わせることで、外鼻孔を拡大させます。こちらも、吸収糸を使用するため、別途抜歯は不要です。
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③手術のリスク
- 手術のリスクは、いくつか考えられますが、特に重要なのは、感染症と、術後の浮腫です。口腔内は菌がたくさん常在しているため、無菌的な手術は難しいですが、傷口が膿んだり、開いたりすることは稀です。一方で、誤嚥性肺炎など、呼吸器の感染症が、手術前後で生じたり、悪化したりすることで、命に関わる感染症に発展する可能性があります。感染症のリスクを術前に十分に把握した上で、抗生剤等を使用することで、できる限りリスクを減らしていきます。
- また、術後は傷口が腫れるため、特に軟口蓋切除を行った際には、軟口蓋の腫れによって呼吸が一時的にしづらくなることがあります。術後は呼吸の様子をよく観察した上で、必要であれば、数日酸素室で入院することもあります。
- その他、術後はフードをふやかすことで、喉に詰まりづらく、消化しやすいように工夫をします。
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④日常のケア
- 短頭種は高温や多湿の環境に弱いため、特に夏場は暑い時間の散歩を避け、外出する際は、ネッククーラーなどの、熱中症対策が必要です。また、過度な運動を避け、無理のない、適度な散歩や運動で健康維持を考えましょう。
- また、肥満や過体重では、首周りなどに脂肪が蓄積することで、気道が狭くなり、呼吸困難の症状が悪化するため、体重の増加には注意が必要です。
飼い主としての予防と注意点
短頭種を飼うことを検討する際は、短頭種は鼻が短い特性上、呼吸しづらい特徴があることをよく理解し、飼育をする必要があります。もし、知らない状態で飼育を始めた方も、これから短頭種の特性についてしっかり学び、安全に生活していけるように日常のケアを心がけましょう。短頭種は呼吸困難を起こしやすいため、緊急時の対応策を事前に知っておくことが重要です。高温環境や過度な運動後に呼吸困難や過度の唾液分泌、意識喪失などの症状が見られた場合、迅速に獣医師の診察を受ける必要があります。かかりつけ以外にも、かかりつけが休みの日や、夜間にかかることができる動物病院を探しておき、いざとなった時に慌てなくて済むように事前に準備しておきましょう。
まとめ
短頭種気道症候群は、短頭種の生体構造に由来する呼吸障害です。この症候群の背景には狭窄した鼻孔、長い軟口蓋、狭い気道といった特性があり、これが原因でさまざまな症状を引き起こします。根本的な解決には、外科治療が望ましいですが、内科治療や、日常のけも健康維持にとって重要です。飼い主としては、予防や早期発見、早期治療の重要性を理解することが重要で、異常が認められる際は、一度、動物病院に相談することが重要です。
短頭種気道症候群について、よく分かりましたか?少しでも、この記事が皆様のお役に立てれば幸いです!
