ぶんペットクリニックロゴ

ご予約はこちら
リンパ腫かもしれないと言われました|セカンドオピニオン症例を獣医師が解説

 

診断がはっきりしないまま治療を続けてよいのでしょうか

 

 

 

 

1. 食欲低下と体重減少が続いた猫ちゃんのセカンドオピニオン

「リンパ腫の可能性があると言われましたが、診断ははっきりしていません」

「治療を続けていますが、なぜこの治療をしているのか、今後どうなるのかがよく分からず不安です」

今回は、このようなお悩みで当院のセカンドオピニオン外来を受診された猫ちゃんの事例をご紹介します。

なお、個人や動物が特定されないよう、経過や数値の一部を変更しています。

 

 

2. 体重が約1kg減り、ほとんど食べられない状態に

猫ちゃんは、数か月前から徐々に食欲が低下していました。

 

もともと4kg以上あった体重は、

受診時には3kg台前半まで減少していました。

 

以前は食べていたドライフードをまったく口にせず、

ウェットフードを数口食べる程度でした。

 

食事の催促には来るものの、

実際にはほとんど食べられない状態です。

 

水を飲む量も減り、

便の回数も少なくなっていました。

 

かかりつけの動物病院では、

最初に胃腸薬が処方され、

その後はステロイドによる治療が行われていました。

 

しかし、食欲や体重は十分に改善しませんでした。

「腸の動きが悪い」

「リンパ腫の可能性もある」

という説明は受けていたものの、

飼い主さんは、

現在どの病気を疑っているのか、

どの程度の可能性があるのか、

次にどのような検査や治療を考えるべきなのかが

整理できず、不安を感じていました。

 

 

3. 飼い主さんが悩んでいたこと

飼い主さんが最も不安に感じていたのは、

単に「リンパ腫かもしれない」と

言われたことだけではありませんでした。

 

診断がはっきりしないまま治療が続いていること。

 

そして、

現時点で何が分かっていて、

何が分かっていないのか

について、十分に理解できていないことでした。

 

治療を受けていても、

目的や見通しが分からなければ、

「このまま同じ治療を続けてよいのだろうか」

「別の検査をしたほうがよいのではないか」

「もっと早く詳しく調べるべきではないか」

と迷ってしまうのは当然だと思います。

 

 

4. 当院で行ったこと

セカンドオピニオンでは、

最初から以前の診断や治療を否定するのではなく、

まず現状を整理することが大切です。

 

この猫ちゃんでは、

血液検査、

レントゲン検査、

腹部超音波検査、

便検査、

膵炎

に関する検査などを行いました。

 

画像検査では、

消化管だけでなく、

肝臓、

胆のう、

胆管、

膵臓

なども含めて、

食欲低下や体重減少の原因となる異常がないかを確認しました。

 

猫では、

腸、

肝臓や胆管、

膵臓の炎症

が同時に起こることもあります。

 

そのため、

当初は腸炎を中心に、

複数の臓器に炎症が起きている可能性も考えました。

 

ただし、

この段階の検査だけで、

慢性腸炎と消化器型リンパ腫を完全に区別することはできません。

 

そこで飼い主さんには、

現時点で考えられる病気として、

慢性腸炎

炎症性腸疾患

膵臓や胆道系を含む炎症

消化器型リンパ腫

などがあることをご説明しました。

 

そのうえで、

まずは腸炎として治療を行い、

反応が乏しい場合には、

内視鏡検査と消化管の生検を検討する方針をお伝えしました。

 

大切なのは、

この時点で無理に診断を断定することではありません。

「今の検査でどこまで分かっているのか」

「まだ分からないことは何か」

「改善しなかった場合、次にどの検査を行うのか」

を、飼い主さんと共有することです。

 

 

5. 治療を続けても改善せず、内視鏡検査へ

その後、腸炎を想定した治療を行いましたが、

十分な改善は認められませんでした。

 

この結果から、

慢性腸炎だけでなく、

消化器型リンパ腫の可能性をさらに詳しく調べる必要があると判断しました。

 

飼い主さんと相談のうえ、

内視鏡検査を実施し、

胃や小腸から組織を採取しました。

 

病理検査では、

小腸の小細胞性リンパ腫が疑われるという結果でした。

 

さらに、

リンパ球が腫瘍性に増殖しているかを調べる

クロナリティ検査を実施したところ、

T細胞系のリンパ球について陽性という結果が得られました。

 

これらの結果を総合し、

低悪性度の消化器型リンパ腫と診断しました。

 

 

6. 診断後は抗がん剤治療を選択

飼い主さんには、

病気の特徴、

治療の目的、

期待できる効果、

副作用の可能性

などをご説明しました。

 

相談の結果、

クロラムブシルという

内服の抗がん剤を使用する治療を選択されました。

 

治療開始後は食欲や体調が改善し、

現在も良好な状態で過ごしています。

 

もちろん、

すべての猫ちゃんが同じ経過をたどるわけではありません。

 

しかし、

この猫ちゃんでは、

診断がはっきりしない状態のまま治療を続けるのではなく、

段階を踏んで検査を進めたことで、

治療方針を明確にすることができました。

 

 

7. セカンドオピニオンを受けることは、今の病院を否定することではありません

セカンドオピニオンというと、

「今の先生を信用していないと思われるのではないか」

「転院するつもりがないと受けてはいけないのではないか」

「まだ治療途中なのに相談するのは失礼ではないか」

と心配される方もいます。

 

しかし、セカンドオピニオンは、

現在の動物病院や治療を否定するためのものではありません。

別の獣医師の視点から病状を整理し、

ほかの検査や治療の選択肢がないかを確認するためのものです。

 

結果として、

現在の治療が妥当だと確認でき、

安心して元の病院で治療を続けられることもあります。

 

一方で、

今回のように治療への反応が乏しく、

診断が進まない場合には、

別の病院で改めて評価を受けることが、

診断や治療の前進につながることもあります。

 

「診断がつかない」

「説明が分からない」も、

相談してよい理由です

 

セカンドオピニオンを検討する理由は、

大きな手術や抗がん剤治療の前だけではありません。

 

治療を続けても改善しない

診断名がはっきりしない

検査結果の意味がよく分からない

今後の見通しが分からない

ほかの検査や治療法がないか知りたい

今の治療を続けてよいのか確認したい

このような迷いがある場合も、

十分に相談する理由になります。

 

飼い主さんが病気や治療について理解し、

納得したうえで選択できることは、

とても大切です。

「こんなことで相談してもよいのだろうか」と一人で悩まず、気軽にご相談ください。

解説・治療・当院の取り組み

arrow_circle_up