犬の糖尿病について ― 岡崎市の動物病院から解説
目次
1. はじめに
「最近うちの犬がやたらと水を飲む」「尿の量が多い」「体重が減ってきたのに食欲だけはある」
そんな様子が見られたら、糖尿病(Diabetes Mellitus)のサインかもしれません。
犬の糖尿病は、血液中の糖(グルコース)が慢性的に高くなる病気です。
放置すると白内障や腎不全、命に関わる合併症を引き起こすこともあります。
本記事では、犬の糖尿病について原因・症状・診断・治療・日常ケアまでを、飼い主さん向けに分かりやすく解説します。
2. 糖尿病とは?
糖尿病は、インスリンというホルモンの不足や作用低下によって血糖値が上がり続ける病気です。
インスリンは膵臓から分泌され、血液中のブドウ糖を体の細胞に取り込む働きをしています。
つまり、インスリンが働かないと、細胞がエネルギーを得られず、血液中の糖が過剰に増えてしまうのです。
3. 犬の糖尿病の分類
■ インスリン依存型糖尿病(タイプⅠ)
- 犬の糖尿病の約90%がこのタイプ。
- 膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなる。
- 生涯にわたりインスリン注射が必要。
- 多くは中高齢期(7歳以上)の雌犬に発症。
■ インスリン非依存型糖尿病(タイプⅡ)
- インスリンは出ているが、細胞がうまく反応しないタイプ。
- 猫に多く、犬では非常にまれ。
4. 好発犬種とリスク要因
■ 好発犬種
- ミニチュア・シュナウザー
- トイ・プードル
- ビション・フリーゼ
- マルチーズ
- ビーグル
- サモエド
- 柴犬 など
■ 年齢
- 中高齢(6歳以上)に多い
■ 性差
- 避妊していない雌犬で発症リスクが高い
■ リスク因子
- 肥満
- ステロイド薬の長期使用
- 発情ホルモンの影響(黄体ホルモン:プロゲステロン)
- 膵炎、クッシング症候群などの内分泌疾患
5. 主な症状
糖尿病の典型的な初期症状は以下の4つのPで覚えると分かりやすいです。
✔ Polydipsia(多飲):たくさん水を飲む
✔ Polyuria(多尿):おしっこの量・回数が増える
✔ Polyphagia(多食):食欲旺盛
✔ Weight loss(体重減少):たくさん食べても痩せる
■ 進行すると
- 元気消失
- 嘔吐・下痢
- 脱水
- 目の白濁(糖尿病性白内障)
- 呼吸が荒くなる(ケトアシドーシス)
6. 診断方法
■ 身体検査・問診
- 飲水量や尿量、体重の変化を確認。
■ 尿検査
- 尿中グルコース(糖)の検出。
- ケトン体陽性なら重症化(糖尿病性ケトアシドーシス)の疑い。
■ 血液検査
- 血糖値の上昇(通常100mg/dL程度 → 200mg/dL以上)。
- フルクトサミン(過去2〜3週間の平均血糖)を測定。
- 電解質や肝・腎機能の確認。
■ 画像検査(腹部エコー)
- 膵炎や腫瘍、子宮疾患などの併発病をチェック。
7. 治療方法
■ インスリン注射
- 犬の糖尿病治療の基本は生涯にわたるインスリン投与です。
- 毎日1〜2回、皮下注射で投与。
- 血糖値を測定しながら適切な種類・量を調整。
- 飼い主さんが自宅で注射を行うケースが一般的。
◆ 代表的な製剤
- レベミル
- ノボリンN(ヒト用インスリン)
- ランタス
■ 食事療法
- 食物繊維が豊富な糖コントロール用療法食が推奨されます。
◆ 主なポイント
- 炭水化物をゆっくり吸収できる処方。
- 高脂肪食・おやつは通常禁止。
- 毎日の給餌時間・量を一定に保つ。
※インスリン投与と食事時間の一致が非常に重要。
■ 運動療法
- 軽度〜中程度の有酸素運動(散歩など)を毎日同じ時間に一定量行う。
- 急な運動量の増減は低血糖の原因になるため避ける。
8. 糖尿病性ケトアシドーシス(緊急症状)
糖尿病が進行し、インスリン不足が極端になると、体は脂肪を分解してエネルギーを作ろうとします。
この際にできる「ケトン体」が血液を酸性に傾ける状態をケトアシドーシスといいます。
■ 症状
- 元気・食欲消失
- 嘔吐、下痢
- 体温低下
- 口臭が甘酸っぱい
- 昏睡
※これは命に関わる緊急事態であり、即日入院・点滴治療が必要です。
9. 予後
✔ 適切な管理ができれば数年以上の良好な生活が可能。
✔ 一方で、管理不良や合併症(白内障・腎不全・感染症など)があると予後は悪化。
✔ 「血糖コントロール」「安定した生活リズム」「定期的な検査」の3点が長寿の鍵です。
10. 飼い主さんができる日常ケア
✔ 毎日の注射を確実に行う
- 同じ時間帯に、同じ部位(背中や肩)に皮下注射。
✔ 食事・運動のリズムを一定にする
- 毎日ほぼ同じ時間・量で安定した生活を保つ。
✔ 低血糖のサインに注意する
- フラつく、震える、意識が朦朧とする場合は低血糖。
- すぐに砂糖水を与え、病院へ連絡。
✔ 定期的な血糖モニタリング
- 動物病院での血糖カーブ測定(数時間ごとの血糖値測定)
- 在宅用血糖測定器を利用するケースもある。
✔ 合併症の早期発見
- 目の白濁(白内障)
- 膀胱炎の繰り返し
- 腎臓の数値上昇
11. まとめ
犬の糖尿病は、インスリン不足による慢性的な高血糖が特徴の病気です。
✔ 典型的な症状は「多飲・多尿・多食・体重減少」。
✔ 診断は血糖・尿糖・フルクトサミン測定で確定。
✔ 治療の基本はインスリン注射+食事管理+生活リズムの安定。
適切に管理すれば長期生存も十分可能です。
岡崎市で「犬がたくさん水を飲む」「尿が多い」「痩せてきた」と感じたら、早めに動物病院で血糖検査を受けてください。
ぶんペットクリニックでは、糖尿病の診断・インスリン調整・食事指導・在宅ケア支援まで総合的にサポートしています。
