犬猫の胸水の原因とは?胸に水が溜まる病気と治療について獣医師が解説
目次
1. 「胸水が溜まっています」と言われたら
動物病院で「胸水が溜まっています」と言われると、
✔ 心臓病でしょうか?
✔ 水を抜けば治りますか?
✔ 命に関わる病気でしょうか?
と、不安になる飼い主様も多いと思います。
まず知っていただきたいのは、胸水は病名ではなく、「胸の中に液体が溜まっている状態」を表す言葉です。
そのため、本当に大切なのは「なぜ胸水が溜まったのか」という原因を調べることです。
2. 胸水とは?
胸水とは、肺と胸壁の間にある「胸腔」に液体が異常に貯留した状態をいいます。
胸水が増えると肺が十分に膨らめなくなり、
✔ 呼吸が速い
✔ 息苦しそう
✔ 運動を嫌がる
✔ 横になることを嫌がる
などの症状がみられます。
大量に貯留すると呼吸困難を起こすため、緊急処置が必要になることもあります。
3. 胸水は性質によって原因を推測できます
胸水は見た目だけではなく、
✔ タンパク質の濃度
✔ 細胞数
✔ 細胞の種類
✔ 色調
などを調べることで、原因をある程度推測できます。
大きく分けると次のように分類されます。
■ 漏出液(ろうしゅつえき)
漏出液は、タンパク質や細胞数が少ない、比較的さらさらした胸水です。
血液中のアルブミンが低下すると、血管内に水分を保てなくなり、胸水が発生します。
◆ 主な原因
✔ タンパク漏出性腸症(PLE)
✔ タンパク漏出性腎症(PLN)
✔ 重度の肝疾患
✔ 栄養失調(まれ)
比較的まれですが、全身性の病気が背景にあることが多い胸水です。
■ 変性漏出液(へんせいろうしゅつえき)
変性漏出液は、漏出液よりもタンパク質や細胞数がやや多い胸水です。
胸の中の静脈圧が上昇したり、リンパ液の流れが悪くなったりすることで発生します。
◆ 主な原因
✔ 右心不全
✔ 肺高血圧症
✔ 心タンポナーデ
✔ 心膜疾患
✔ 腫瘍による静脈やリンパ管の圧迫
犬では比較的よく遭遇するタイプの胸水です。
特に、肺高血圧症や右心不全では胸水が最初の異常として見つかることもあります。
■ 滲出液(しんしゅつえき)
滲出液は、炎症によって生じる胸水です。
タンパク質や炎症細胞が多く含まれ、濁っていることもあります。
◆ 主な原因
✔ 膿胸
✔ 細菌感染
✔ 胸膜炎
✔ 一部の腫瘍
発熱や元気消失を伴うことが多く、早急な治療が必要になる場合があります。
■ 血胸(けっきょう)
胸腔内に血液が貯留した状態です。
◆ 主な原因
✔ 交通事故などの外傷
✔ 血管肉腫
✔ 凝固異常
特に高齢犬では、脾臓や心臓の血管肉腫からの出血も重要な鑑別疾患です。
■ 乳び胸(にゅうびきょう)
乳び胸は、リンパ液(乳び)が胸腔内に漏れる病気です。
胸水は乳白色になることが多く、
✔ 特発性乳び胸
✔ 心疾患
✔ 腫瘍
✔ 横隔膜ヘルニア
などが原因となります。
長期間続くと胸膜の線維化を起こし、治療が難しくなることがあります。
■ 腫瘍による胸水
胸水の原因として、腫瘍は常に考えなければならない病気の一つです。
例えば、
✔ リンパ腫
✔ 胸腺腫
✔ 転移性腫瘍
✔ 中皮腫
などでは胸水が認められることがあります。
腫瘍細胞が胸水中に見つかることもありますが、胸水検査だけで診断できないことも少なくありません。
4. 胸水が見つかったらまず行うこと
呼吸が苦しい場合は、まず胸水を抜いて呼吸を楽にすることが優先されます。
その際に採取した胸水は、
✔ 細胞診
✔ 細菌培養
✔ タンパク質濃度
✔ 中性脂肪・コレステロール測定(乳び胸が疑われる場合)
などを行い、原因を調べます。
5. 胸水の原因を調べるために必要な検査
胸水だけでは原因が分からないことも多いため、状態に応じて
✔ 胸部レントゲン検査
✔ 超音波検査(心エコー・胸部エコー)
✔ 血液検査
✔ CT検査
などを組み合わせて診断を進めます。
特に心エコーでは、
✔ 心臓病
✔ 心タンポナーデ
✔ 肺高血圧症
などの評価が可能であり、胸水の原因を考えるうえで非常に重要な検査です。
6. 当院で大切にしていること
胸水の治療で重要なのは、
「胸水を抜くこと」ではなく
「なぜ胸水が溜まったのか」を明らかにすることです。
当院では
✔ 呼吸状態の安定化
✔ 胸水の性状の評価
✔ 原因疾患の診断
✔ 今後の治療方針
を一つひとつ整理しながら、飼い主様にも分かりやすくご説明することを大切にしています。
7. まとめ
胸水は病気ではなく、さまざまな病気によって起こる「結果」です。
胸水が見つかった場合は、
✔ 漏出液なのか
✔ 変性漏出液なのか
✔ 滲出液なのか
✔ 血液なのか
✔ 乳びなのか
を評価し、その原因を調べることが適切な治療につながります。
呼吸が速い、苦しそう、元気がないなどの症状がみられる場合は、早めの受診をおすすめします。
