犬猫のお腹に水が溜まる「腹水」とは?考えられる原因や治療について獣医師が解説
目次
1. お腹が膨らんできた…それは腹水かもしれません
最近、
✔ お腹だけが急に大きくなった
✔ 太ったわけではないのにお腹が張っている
✔ 呼吸が少し苦しそうになってきた
このような変化はありませんか?
これらの症状は、腹水が原因になっていることがあります。
腹水とは、お腹の中に異常な量の液体が溜まった状態です。
しかし、腹水そのものが病気なのではなく、
何らかの病気によって腹水が生じている「結果」であることがほとんどです。
そのため、腹水が見つかった場合は、水を抜くことだけではなく、その背景にある病気を見つけることが重要になります。
2. 腹水が溜まる仕組み
健康な犬や猫でも、お腹の中にはごく少量の液体が存在しています。
この液体は臓器同士の摩擦を減らす役割があります。
ところが、
✔ 血管から水分が漏れやすくなる
✔ 血液の流れが悪くなる
✔ 炎症が起こる
✔ 出血する
✔ リンパ液が漏れる
などの異常が起こると、腹水が増えてしまいます。
つまり、腹水は一つの病気ではなく、さまざまな異常の結果として起こる症状なのです。
3. 腹水の原因は「水の性質」から考えていきます
腹水が見つかった場合は、腹水を採取して性質を調べることで、原因をある程度推測できます。
腹水は大きく分けると4つのタイプに分類されます。
■ 漏出液
もっとも水分に近い腹水です。
これは血液中のアルブミンというタンパク質が減少し、血管内に水分を保てなくなったときにみられます。
例えば、
✔ タンパク漏出性腸症(PLE)
✔ タンパク漏出性腎症(PLN)
✔ 重度の肝機能低下
などが代表的です。
腹水だけでなく、手足や顔にむくみが出ることもあります。
■ 変性漏出液
犬で最もよく遭遇するタイプの腹水です。
血液の流れが慢性的に滞ることで発生します。
原因として多いのは、
✔ 右心不全
✔ 心タンポナーデ
✔ 肺高血圧症
✔ 門脈圧亢進
✔ 肝硬変
✔ 腫瘍による静脈圧迫
などです。
特に心臓病では、「お腹だけが膨らんできた」という症状から見つかることも珍しくありません。
■ 滲出液
炎症によってできる腹水です。
細胞やタンパク質を多く含み、濁っていることもあります。
代表的な原因には、
✔ 細菌性腹膜炎
✔ 消化管穿孔
✔ 胆汁性腹膜炎
✔ 重度の膵炎
などがあります。
これらは命に関わることも多く、早急な治療が必要になります。
■ 血液・乳びなど特殊な腹水
腹水の中には、
通常の分類とは異なるものもあります。
例えば、
◆ 血腹
では、
✔ 血管肉腫
✔ 肝臓・脾臓腫瘍
✔ 外傷
などが考えられます。
また、
◆ 乳び腹水
ではリンパ液が漏れ出しており、
リンパ管の異常や腫瘍などが背景にあることがあります。
4. 腹水があるときに行う検査
腹水を確認した後は、
「何が原因なのか」を調べるために、
✔ 血液検査
✔ 腹部超音波検査
✔ レントゲン検査
✔ 心エコー検査
✔ 必要に応じてCT検査
などを組み合わせます。
腹水だけを見ても原因は分からないため、
全身の状態を総合的に評価することが重要です。
5. 腹水は必ず抜いた方がいいのでしょうか?
「腹水があるなら全部抜いた方がいいのでは?」
と思われる方もいらっしゃいます。
しかし、腹水には体内のタンパク質や電解質も含まれているため、
必要以上に抜くことがかえって体に負担をかけることがあります。
そのため、
✔ 呼吸が苦しい
✔ 強い腹部膨満がある
✔ 検査が必要
などの場合に腹水を採取・排液することが一般的です。
6. 当院で大切にしていること
腹水は、原因によって治療法がまったく異なる症状です。
例えば、
✔ 心臓病が原因なら循環器の治療
✔ 肝疾患なら肝臓の治療
✔ 腫瘍なら腫瘍に対する治療
✔ 腹膜炎なら緊急手術
と、アプローチは大きく変わります。
そのため当院では、腹水だけを見るのではなく、
「なぜ腹水が生じたのか」
という視点を大切に診療しています。
7. まとめ
腹水は、全身の病気が表れているサインです。
「お腹に水が溜まっている」という結果だけを見るのではなく、
その背景にある病気を見つけることが、適切な治療につながります。
お腹が張ってきた、元気がない、食欲が落ちているなど気になる症状がある場合は、早めにご相談ください。
