犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)について ― 岡崎市の動物病院から解説
目次
1. はじめに
✔ なんとなく元気がない
✔ 食欲が落ちている
✔ 下痢と嘔吐を繰り返す
などの症状を見せると、胃腸炎やストレスが原因と思われがちです。
しかし、こうした曖昧な症状の背後にアジソン病(Addison’s disease)が隠れていることがあります。
アジソン病は、副腎という臓器の機能が低下して、体を維持するために必要なホルモンが不足する病気です。
発見が遅れると「アジソンクリーゼ」と呼ばれる命に関わる急性発作を引き起こすこともあります。
本記事では、犬のアジソン病について原因・症状・診断・治療・予防・日常ケアまで、飼い主さん向けに詳しく解説します。
2. アジソン病とは?
アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、副腎皮質から分泌されるコルチゾール(糖質コルチコイド)とアルドステロン(電解質調整ホルモン)の産生が不足する病気です。
これらのホルモンは以下のような重要な働きを担っています
■ コルチゾール
- ストレスへの適応
- 血糖維持
- 免疫調整
■ アルドステロン
- ナトリウムとカリウムのバランス維持
- 水分調整
これらが欠乏すると、体内のバランスが崩れ、全身の臓器機能が低下します。
3. 好発犬種・発症年齢・性差
■ 好発犬種
- スタンダードプードル
- トイ・プードル
- ウェスト・ハイランド・ホワイトテリア
- ビーグル
- ノバスコシア・ダックトーリング・レトリーバー など。
■ 発症年齢
- 多くは中年期(3〜7歳)
■ 性差
- 雌犬に多い(特に避妊後もリスクあり)
4. 原因
アジソン病の多くは自己免疫性疾患が原因です。
免疫システムが誤って自分の副腎を攻撃してしまい、ホルモンを作る細胞が破壊されてしまいます。
■ その他の原因
- 腫瘍や感染による副腎の破壊
- ステロイド薬の長期投与からの急な中止(医原性アジソン病)
- 脳下垂体の障害による二次性アジソン病(稀)
5. 症状
アジソン病は「偽胃腸炎」とも呼ばれ、初期は胃腸炎に似た症状を示します。
■ 慢性期の症状
✔ 食欲不振
✔ 元気消失
✔ 嘔吐・下痢
✔ 体重減少
✔ 脱水
✔ 被毛のパサつき
これらの症状は慢性的に続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
■ 急性期(アジソンクリーゼ)
病気が進行してホルモン欠乏が限界に達すると、急激にショック状態を起こします。
✔ 急な嘔吐・下痢
✔ ぐったりして動けない
✔ 体温低下
✔ 脱水・低血圧
✔ 不整脈(高カリウム血症による心停止リスク)
アジソンクリーゼは緊急治療が必要で、放置すると命に関わります。
6. 診断方法
アジソン病は症状が多様で、他の疾患と区別が難しいため、確定診断には専門的な検査が必要です。
■ 血液検査
- ナトリウム(Na)低下、カリウム(K)上昇 → Na/K比が低下(典型例は25未満)
- 貧血や低血糖も見られることがある
■ ACTH刺激試験(確定診断)
- 副腎を刺激するホルモン(ACTH)を注射し、反応を測定。
- コルチゾールが上昇しなければアジソン病と診断。
■ 心電図検査
- 高カリウム血症による心電図異常を確認。
■ エコー検査
- 副腎が萎縮しているかどうかを評価。
7. 治療方法
■ 急性期(アジソンクリーゼ)の治療
- 緊急入院し、集中的治療を行います。
- 点滴で水分・電解質を補正
- ステロイド(コルチゾール)補充
- 心臓への負担を減らす処置
- 安定するまで24〜48時間の集中管理が必要です。
■ 慢性期の維持治療
一度発症すると生涯にわたりホルモン補充療法が必要になります。
◆ ミネラロコルチコイド補充
- デソキシコルチコステロンピバレート(DOCP)注射を3〜4週間ごとに投与。
- もしくはフルドロコルチゾン(経口薬)。
◆ グルココルチコイド補充
- プレドニゾロンなどの経口薬でコルチゾールを補う。
- 定期的な血液検査でNa/K比と臨床症状をモニタリング。
8. 予後
適切に治療すれば寿命は健康な犬とほぼ同等に保つことが可能。
ただし、薬の中断やストレスによって症状が再発することがあるため、継続的な管理が必須です。
定期的な血液検査で薬の量を調整することが重要。
9. 飼い主さんができる日常ケア
✔ 定期的な通院
- 治療開始後も、1〜3か月ごとの血液検査でホルモンバランスを確認。
✔ ストレスを避ける
- 旅行や引っ越しなどの環境変化は病状悪化の引き金になります。
✔ 薬の管理を徹底
- 忘れずに服用・注射を行う。
- 中断は禁物。
✔ 緊急時の対応を把握
- 嘔吐・ぐったり・食欲廃絶などの症状が出たらすぐ病院へ。
✔ 家庭での観察ポイント
- 元気・食欲・飲水量・排便のチェック
- 体重減少や毛艶の変化にも注意
10. まとめ
犬のアジソン病は、初期症状があいまいなため見逃されやすい病気です。
しかし、適切に診断・治療すれば完治はしなくても長く穏やかに過ごすことが可能です。
✔ 若い雌犬でも発症することがある
✔ 胃腸炎のような症状が続く場合は検査を
✔ 定期的な血液検査と継続治療が長生きの鍵
岡崎市で「原因不明の元気消失や下痢を繰り返す」「食欲の波が激しい」などの症状がある場合は、早めに動物病院へご相談ください。
ぶんペットクリニックでは、アジソン病を含む内分泌疾患の診断・治療・生活指導まで、飼い主さんと愛犬の健康をサポートしています。
