療法食を続けているのに、また結晶がこの治療で合っている?
目次
1. 尿石症の治療目標を整理したセカンドオピニオン
✔ 尿検査をすると、結晶が出たり出なかったりします
✔ 療法食を続けているのに、また結晶が出ました
✔ そもそも療法食をあまり食べてくれず、このまま続けられるか不安です
✔ 今度は違う種類の結晶かもしれないと言われて、何を信じていいのか分かりません
今回は、
このようなお悩みで当院へ
セカンドオピニオンとして
来院されたワンちゃんの事例をご紹介します。
なお、
個人や動物が特定されないよう、
経過や数値の一部を変更しています。
2. 1年前から尿の結晶を指摘されていた
このワンちゃんは、
約1年前の健康診断で
尿中にストルバイト結晶が見つかりました。
その後、
尿石症用の療法食を開始し、
受診時にはヒルズのc/dを食べていました。
ただし、
もともと療法食だけでは
食いつきがあまりよくなく、
完食できないこともありました。
そのうえ、尿検査では、
✔ 今回は結晶があります
✔ 今回はありません
という状態を繰り返していました。
最近では排尿回数も増え、
2時間に1回ほどおしっこをすることもありました。
さらに、
ある日の尿検査では、
✔ 今までのストルバイトではなく、シュウ酸カルシウムかもしれない
という話もありました。
飼い主さんとしては、
✔ 療法食を食べているのに、なぜまた結晶が出るの?
✔ そもそも療法食をあまり食べてくれないけれど、どうしたらいいの?
✔ 今までの治療が間違っていたの?
✔ 結晶の種類まで変わってしまったの?
✔ このフードをずっと食べ続けないといけないの?
と、治療の方向性が分からなくなっていました。
3. 飼い主さんが迷っていたこと
今回の相談で一番大きかったのは、
✔ 結局、何を目標に治療すればいいのか分からない
ということでした。
尿検査の結果が毎回同じではないと、
✔ また悪くなった
✔ 治療が効いていない
✔ もっと強い治療をしないといけないのでは
と感じやすくなります。
さらに、
療法食を続けているのに結晶が出ると、
✔ このご飯で本当に大丈夫なのか
という不安も出てきます。
そこで当院では、まず、
✔ 今、実際に何が問題になっているのか
を整理することから始めました。
4. 当院で確認したこと
当院では、
尿検査と超音波検査を行いました。
尿検査では、
✔ 尿のpH
✔ 尿比重
✔ 結晶の有無
✔ 出血や炎症の有無
などを確認しました。
さらに超音波検査で、
膀胱や腎臓の中に
実際の結石ができていないか
も確認しました。
ここで大切なのが、
✔ 尿の中に結晶があること
とは、
✔ 体の中に結石があること
同じではないという点です。
尿検査で結晶が見つかっても、
必ずしもすぐに結石ができているとは限りません。
ただし、
結晶が持続的に出続ける状態は問題です。
尿中の結晶が繰り返し、
あるいは長期間確認される場合には、
それらが集まって膀胱結石や尿路結石へ
発展する可能性が高くなるため、
食事や水分摂取、
必要に応じたサプリメントなどで
対策する必要があります。
つまり、
✔ 結晶が少し出たからすぐ危険
ではない一方で、
✔ ずっと出続けても大丈夫
というわけでもありません。
その経過を見ることが大切です。
✔ 前回と違う結晶が出た
は本当に病態が変わった?
飼い主さんが特に心配されていたのが、
✔ 今までストルバイトだったのに、今度はシュウ酸カルシウムかもしれない
という点でした。
ただし、
尿中の結晶は、
尿を採取してから検査するまでの
時間や保存方法によっても
変化することがあります。
特に冷蔵保存した尿では、
時間の経過とともに
結晶が新たに形成されることがあります。
そのため、
✔ 一度違う結晶が見つかった=体の中で急に別の結石ができ始めた
とは限りません。
✔ 採尿してからどれくらい時間が経っていたのか
✔ どのように保存されていたのか
も含めて、結果を解釈する必要があります。
5. セカンドオピニオンで整理できたこと
今回の診察では、
✔ 何をもって治療がうまくいっていると考えるのか
を整理しました。
尿石症では、
尿中の結晶をできるだけ減らすことは大切です。
特に、
結晶が継続して出続ける状態は、
将来的な結石形成につながる
可能性があるため、対策が必要です。
一方で、
尿検査で一時的に
少量の結晶が見つかったからといって、
すぐに大きな問題が起きているとは限りません。
そのため、
✔ 結晶が持続しているか
✔ 実際に結石ができていないか
✔ 頻尿や血尿などの症状があるか
✔ 尿のpHや濃さがどうか
を総合的に見ながら治療を調整していきます。
6. フードは、より効果が高いものを試したものの……
受診時には、
すでにヒルズのc/dを食べていました。
尿の状態から考えると、
ロイヤルカナンの尿石症用療法食の方が、
より強くストルバイト対策を
期待できると考えたため、
当院では一度そちらを
試してみることをご提案しました。
しかし、
実際には好みに合わず、
継続して食べることができませんでした。
療法食は、
医学的に優れていても、
食べなければ治療として成立しません。
そこで最終的には、
もともと食べていた
ヒルズのc/dへ戻すことにしました。
ただし、
c/dだけでは十分に食べきれないこともあったため、
今回は食欲を優先し、
必要に応じてトッピングも許容する方針としました。
尿石症では、
療法食以外のものを混ぜることで、
食事療法の効果が弱くなる可能性があります。
それでも、
✔ 療法食100%にこだわって食べなくなる
よりも、
✔ ある程度トッピングを使いながらでも、継続して食べられる
ことを優先した方がよい場合もあります。
その分、
ほかの方法で尿石形成の
リスクを下げることが必要になります。
そこで、
サプリメントも併用
今回のように、
✔ 理想的な療法食への変更が難しい
✔ c/dだけでは完食できない
✔ トッピングも必要
という状況では、
食事だけで尿の状態を十分に
コントロールできない可能性があります。
そこで、
補助的な対策として
ウロアクトを使用しました。
ここでも、
✔ とりあえずずっと続ける
のではなく、
✔ この子に本当に効果があるか
を確認しました。
経過を見ると、
ウロアクトを飲んでいる期間は
✔ 結晶が出にくく、
使用をやめると
✔ 再び結晶が確認される
傾向がみられました。
そのため、
✔ この子ではウロアクトを継続する意味がありそう
と判断しました。
理想的な療法食を100%食べることが
難しいからこそ、
サプリメントを併用する
意味があると考えました。
7. 水分摂取も大切な治療のひとつ
尿石症では、
食事だけでなく
水分摂取も非常に重要です。
✔ 水分を多く摂ることで尿量が増え、尿が薄くなります。
✔ 尿中のミネラル濃度が下がれば、結晶が形成されにくくなることが期待できます。
そのため、ご自宅では、
✔ 飲水場所を増やす
✔ 水をこまめに交換する
✔ ウェットフードを利用する
✔ ドライフードに水分を加える
✔ 好みに応じて飲みやすい器を試す
など、水分摂取を増やす工夫もご提案しました。
尿石症の治療は、
✔ どのフードを食べるか
だけで決まるわけではありません。
✔ 食事
✔ 水分
✔ サプリメント
✔ 定期検査
を組み合わせて管理することが大切です。
8. 今回決めた治療の目標
今回のワンちゃんでは、
✔ 結晶が持続的に出続ける状態をできるだけ減らす
✔ 膀胱や腎臓に結石を作らせない
✔ ヒルズc/dをベースに、食べられない場合はトッピングも利用する
✔ ウロアクトを継続する
✔ 水分摂取量を増やす
✔ 定期的な尿検査と超音波検査で経過を確認する
という方針に整理しました。
✔ 理想的なフードを100%食べられないなら治療できない
ということではありません。
できない部分を、
✔ サプリメント
✔ 水分摂取
✔ 定期検査
などで補いながら、
現実的に続けられる治療を
組み立てることもできます。
9. この事例からお伝えしたいこと
尿石症の治療では、
✔ この療法食を食べれば絶対大丈夫
というほど単純ではありません。
✔ 尿の状態
✔ 結晶の出方
✔ 食事の好み
✔ 水分摂取量
などは、一頭一頭違います。
今回のように、
✔ より効果が期待できるフードを試したけれど食べられなかった
ということもあります。
その場合に大切なのは、
無理に一つの方法に
こだわることではありません。
その子が実際に続けられる方法の中で、
どうすれば結石形成のリスクを
できるだけ下げられるかを考えることが重要です。
また、
尿中に結晶が少量確認されたからといって、
すぐに大きな病気というわけではありません。
一方で、
結晶が長期間出続ける場合には、
結石化するリスクがあるため、
ずっと様子見でよいわけでもありません。
尿検査の結果を
一回ごとに見るのではなく、
経過として捉えることが大切です。
セカンドオピニオンでは、
✔ 今の食事を続けてよいのか
✔ ほかの療法食を試す意味があるのか
✔ サプリメントが必要なのか
✔ トッピングをしてもよいのか
✔ どれくらい結晶が出たら問題なのか
✔ 何を目標に治療を続けるのか
といった点を、一つずつ整理することができます。
✔ 今の治療が本当にこの子に合っているのか分からない
✔ 療法食を食べてくれず困っている
✔ 尿検査の結果が毎回違って不安
そのような場合も、
気軽にご相談ください。
