犬の甲状腺機能低下症について ― 岡崎市の動物病院から解説
目次
1. はじめに
「最近、うちの犬が太ってきた」「寝てばかりで元気がない」「毛が抜けて生えてこない」
そんな様子を見たことはありませんか?
これらの症状の背景に、甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)という病気が隠れていることがあります。
甲状腺機能低下症は中高齢犬で多くみられるホルモン疾患で、体の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンが不足することで、全身の機能が低下してしまう病気です。
本記事では、犬の甲状腺機能低下症について原因・症状・診断・治療・予防・日常ケアを岡崎市の動物病院の視点で分かりやすく解説します。
2. 甲状腺の役割と病気の仕組み
甲状腺は首の下部に位置し、T3(トリヨードサイロニン)とT4(サイロキシン)というホルモンを分泌しています。
これらのホルモンは体内の「代謝スイッチ」を司り、体温調整、心拍数、皮膚・被毛の健康、脳の働き、筋肉や消化の機能に影響を与えます。
甲状腺ホルモンが不足すると、エネルギー産生が低下し、体の機能全体が「スローモード」になります。
3. 好発犬種と発症年齢
■ 好発犬種
- ゴールデン・レトリーバー
- ラブラドール・レトリーバー
- ビーグル
- ダックスフンド
- コッカー・スパニエル
- ドーベルマン
- シベリアン・ハスキーなど
■ 発症年齢
- 多くは中年期(4〜10歳)。
■ 性差
- 去勢・避妊済みの犬にやや多い傾向があります。
4. 原因
甲状腺機能低下症の主な原因は2つあります。
■ 原発性甲状腺機能低下症(最も多い)
- 甲状腺そのものに障害が起こり、ホルモンを作れなくなるタイプ。
- 原因の約95%を占めます。
- 自己免疫反応(リンパ球性甲状腺炎):免疫系が甲状腺を攻撃
- 甲状腺の萎縮や線維化
■ 二次性甲状腺機能低下症(まれ)
- 脳下垂体から分泌されるTSH(甲状腺刺激ホルモン)が不足し、甲状腺が刺激されないタイプ。
- 腫瘍や下垂体の異常が原因となることがあります。
5. 主な症状
甲状腺ホルモンの不足により、代謝全体が低下するため、さまざまな症状が現れます。
■ 一般的な症状
✔ 元気消失・無気力
- 寝てばかりいる
- 動きたがらない
✔ 体重増加
- 食事量が変わらないのに太る
✔ 寒がり
- 冷たい床を避ける
- 暖かい場所を好む
✔ 心拍数の低下
✔ 皮膚・被毛の異常
- 毛が薄くなる(特に尻尾の付け根や体側)
- 毛が再生しにくい
- フケや皮膚の黒ずみ(色素沈着)
✔ 神経症状(重度の場合)
- ふらつき
- 反応の鈍化
■ 飼い主が気づきやすいサイン
✔ 以前よりお散歩の距離が短くなった
✔ 毛が抜けて地肌が見える
✔ 体が丸く太ってきた
といった、ゆっくりとした変化です。
6. 診断方法
甲状腺機能低下症は他の病気と症状が似ているため、総合的な検査で診断します。
■ 身体検査・問診
- 症状の経過、食事、行動変化を確認。
■ 血液検査
- T4(サイロキシン)・フリーT4:甲状腺ホルモンの量を測定。
- TSH(甲状腺刺激ホルモン):高値であれば甲状腺の機能低下を示唆。
- コレステロールや中性脂肪の上昇も特徴的。
■ その他の検査
- エコー検査などで他の病気がないかどうか確認。
7. 治療方法
治療の基本は甲状腺ホルモンの補充です。
■ 内服薬によるホルモン補充
- 甲状腺ホルモン薬を1日1〜2回投与。
- 血中のホルモン濃度を維持し、代謝を正常に戻す。
- 効果は数日〜数週間で現れ、元気や毛艶が徐々に回復します。
■ 投薬後のモニタリング
- 投薬2〜4週間後に再検査し、血中T4値を確認。
- 適正濃度になるように薬の量を調整。
- その後は3〜6か月ごとの定期検査が必要です。
■ 合併症への対処
- 高脂血症や肝機能異常を伴う場合は併用治療。
- 心臓病・肥満がある場合は運動制限と食事管理も行う。
8. 予後
✔ 適切な治療を行えば寿命や生活の質は健康な犬とほぼ同等に保てます。
✔ 投薬を中止すると再発するため、生涯の服薬が必要です。
✔ 投与量が多すぎると「甲状腺機能亢進症」様の症状(落ち着きがない、頻脈など)が出ることがあるため、定期的な検査が重要です。
9. 飼い主さんができる日常ケア
✔ 薬を正しく与える
- 投与時間を毎日一定にする。
- 食前・食後は獣医師の指示に従う。
✔ 体重・食欲・行動の記録
- 元気や体重の変化を日誌に残すと治療効果の評価に役立つ。
✔ 定期検診を継続
- 3〜6か月ごとにホルモン値・コレステロール値をチェック。
✔ バランスの取れた食事管理
- 肥満防止と高脂血症対策のため、低脂肪フードやシニア用療法食を検討。
✔ 寒さ対策
- 冷えに弱くなるため、冬は毛布やヒーターで体温維持を。
10. まとめ
犬の甲状腺機能低下症は、中年以降の犬でゆっくり進行する代謝疾患です。
✔ 元気の低下、体重増加、毛艶の悪化は早期発見のサイン。
✔ 血液検査で簡単に診断でき、投薬で改善が見込めます。
✔ 適切な治療を続ければ長期的に良好な生活が可能です。
岡崎市で「うちの犬が太ってきた」「毛が薄くなってきた」「寝てばかりいる」といった変化を感じた飼い主さんは、早めに動物病院で検査を受けてください。
ぶんペットクリニックでは、甲状腺機能低下症の診断・治療から、ホルモン値の定期モニタリング、生活指導までトータルでサポートしています。
