手術した方がいいのは分かる。肛門嚢アポクリン腺癌を疑われたワンちゃんのセカンドオピニオン
目次
1. 肛門嚢アポクリン腺癌を疑われたワンちゃんのセカンドオピニオン
✔ 「お尻にしこりがあり、がんの可能性が高いと言われました」
✔ 「手術をした方がいいとは分かっています。
✔ 「もし手術をしなかったら、これからどうなってしまうのでしょうか」
今回は、
このようなお悩みで当院へ
セカンドオピニオンとして来院された
ワンちゃんの事例をご紹介します。
なお、
個人や動物が特定されないよう、
経過や数値の一部を変更しています。
2. 最初は、お尻からの出血でした
このワンちゃんは、
年明けに硬いおやつを食べたあと、
お尻から出血がみられました。
丸呑みすることもあったため、
飼い主さんは最初、
「硬いものを食べて傷ついたのかな」
と思っていました。
出血はいったん治まりましたが、
その後、
お尻の横に赤みとしこりがあることに気づきました。
他院で詳しい検査を受けたところ、
肛門嚢付近にゴルフボールほどの腫瘤があり、
細胞診の結果などから、
肛門嚢アポクリン腺癌の可能性が高いと説明されました。
さらに、
✔ 「リンパ節へ転移している可能性がある」
✔ 「手術が必要になる可能性が高い」
✔ 「大きな血管が近く、実際に手術してみないと分からない部分もある」
という説明も受けました。
3. 肛門嚢アポクリン腺癌とは?
肛門嚢アポクリン腺癌は、
犬の肛門嚢にできる悪性腫瘍です。
肛門の左右にある肛門嚢の分泌腺から発生し、
局所で大きくなるだけでなく、
腹腔内のリンパ節などへ転移することがあります。
腫瘍が大きくなると、
✔ 排便しづらくなる
✔ 便が細くなる
✔ いきむ時間が長くなる
✔ お尻を気にする
✔ 出血する
といった症状が出ることがあります。
また、
一部の症例では腫瘍の影響によって
血液中のカルシウムが高くなる
「高カルシウム血症」が起こります。
その場合には、
✔ 水をたくさん飲む
✔ 尿量が増える
✔ 食欲が低下する
✔ 元気がなくなる
✔ 嘔吐する
などの症状がみられることがあります。
今回のワンちゃんでも、
来院前から飲水量が増えているように
感じるとのことで、
この点も飼い主さんは心配されていました。
4. 飼い主さんが迷っていたこと
飼い主さんは、
手術そのものを
拒否していたわけではありませんでした。
むしろ、
✔ 「できるなら手術をしてあげたい」
というお気持ちはありました。
ただし、
✔ 手術費用が大きい
✔ 手術の難易度やリスクが心配
✔ リンパ節転移があった場合に、手術だけで意味があるのか
✔ 手術しても再発するのではないか
✔ 抗がん剤まで必要になるのか
✔ 何もしなかった場合に、どのように悪化するのか
といったことが整理できず、
決断できない状態でした。
「手術をした方がいい」と言われても、
その先が見えなければ、
なかなか決めることはできません。
そこで当院では、
手術をするかどうかを決める前に、
まず病気が今後どのように進む可能性があるのかを
整理することにしました。
5. 当院で確認したこと
今回のセカンドオピニオンでは、
✔ 現在の腫瘤の大きさや位置
✔ 細胞診など、これまでの検査結果
✔ リンパ節転移の可能性
✔ 排便への影響
✔ 高カルシウム血症の可能性
✔ 手術によってどこまで改善が期待できるか
✔ 手術後に追加治療が必要になる可能性
を一つずつ確認しました。
特に大切だったのは、
✔ 「この腫瘍が大きくなると何が困るのか」
という点です。
肛門嚢付近の腫瘍は、
局所で大きくなると直腸を圧迫し、
排便が難しくなることがあります。
さらに腹腔内のリンパ節が大きくなると、
そちらからも直腸が圧迫されることがあります。
つまり、治療を考えるうえでは、
「がんだから取る」
というだけではなく、
将来的な排便困難や痛みなど、
局所症状を防ぐ意味
も考える必要があります。
6. 手術をすると、何が期待できるのか
手術の目的は、
大きく二つあります。
✔ 一つは、腫瘍をできる限り取り除くことです。
✔ もう一つは、腫瘍による圧迫や出血など、今後起こり得る局所症状を軽減することです。
もちろん、
悪性腫瘍なので、
手術をすれば必ず完治する
というわけではありません。
すでにリンパ節転移がある場合や、
今後ほかの臓器へ転移する可能性もあります。
しかし、
✔ 「将来的に排便ができなくなる」
✔ 「腫瘍が大きくなり、痛みや出血が増える」
といった問題を抑える意味では、
手術に大きな意義がある場合があります。
7. 手術をしない場合はどうなる?
飼い主さんには、
手術をしないという選択肢
についてもお話ししました。
手術をしない場合、
腫瘍の進行に合わせて、
✔ 排便困難
✔ しぶり
✔ 出血
✔ 疼痛
✔ リンパ節の腫大
✔ 高カルシウム血症
✔ 全身状態の悪化
などが起こる可能性があります。
もちろん、
どのくらいの速度で進行するかには
個体差があります。
そのため、
「手術しなければすぐに危険」
と単純に言えるわけではありません。
一方で、
腫瘍が大きくなってからでは、
手術の難易度が上がったり、
症状をコントロールしにくくなったりする
こともあります。
つまり、
手術をするかどうかは、
今の状態だけでなく、
これから起こり得ることを含めて
考える必要があります。
8. セカンドオピニオンで整理できたこと
今回、最も大きかったのは、
「手術をするかしないか」
だけではなく、
それぞれを選んだ場合に、
その先に何が起こる可能性があるのか
を整理できたことでした。
飼い主さんには、
✔ 手術によって期待できること
✔ 手術のリスク
✔ 手術しても転移や再発の可能性は残ること
✔ 手術しなかった場合に起こり得る局所症状
✔ 高カルシウム血症などの全身への影響
✔ 手術後に抗がん剤を追加する選択肢
✔ 抗がん剤を行わず経過観察する選択肢
について説明しました。
がん治療では、
「手術をしたら、次は必ず抗がん剤」
というわけではありません。
病理検査の結果や転移の有無、
ご家族の希望、
その子の体調などを見ながら、
その後の治療を改めて決めることもできます。
■ その後、手術を選択
飼い主さんは、
ご家族で改めて相談され、
最終的には手術を選択されました。
手術後の経過は良好でした。
その後、
追加の抗がん剤治療についても
ご説明しましたが、
飼い主さんは抗がん剤を希望されず、
定期的な検査を行いながら
経過観察する方針を選択されました。
これは、
「手術をしたのだから、できる治療を全部行わなければならない」
ということではありません。
手術後に改めて状況を整理し、
✔ 「ここまでは治療する」
✔ 「ここから先は経過を見たい」
と決めることも、一つの選択です。
9. この事例からお伝えしたいこと
がんの治療では、
「手術を勧められたけれど、決めきれない」
ということは珍しくありません。
特に、
✔ 手術費用が大きい
✔ 麻酔や手術のリスクが心配
✔ 手術しても治らない可能性がある
✔ 抗がん剤まで必要なのか分からない
✔ 何もしなかった場合にどうなるのか知りたい
といった状況では、迷うのは当然です。
セカンドオピニオンは、
「手術を受けるよう説得される場所」ではありません。
手術をする場合、
しない場合、
それぞれの先に何があるのかを整理し、
ご家族が納得できる選択をするための
場でもあります。
今回のように、
最終的に手術を選ぶケースもあれば、
病気の進行やご家族の希望によっては、
手術をせず症状を抑える治療を選ぶこともあります。
大切なのは、
その治療が医学的にできるかどうかだけでなく、
その子とご家族にとって納得できる選択かどうか
だと考えています。
✔ 「手術を勧められたけれど迷っている」
✔ 「費用やリスクを含めて、もう一度整理したい」
✔ 「手術をしなかった場合のことも知ったうえで決めたい」
そのような場合も、セカンドオピニオンをご利用いただけます。
