🐶🐱 犬猫の肺炎 ― 咳や呼吸が苦しいときは早めに受診を
目次
1. 肺炎とは?
肺炎とは、肺に炎症が起こって正常に酸素を取り込めなくなる病気です。
肺はスポンジのように細かい空間(肺胞)を持ち、そこから酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を排出しています。
肺炎になると、この肺胞に炎症や液体の貯留が起こり、酸素交換がうまくできなくなります。
犬や猫の肺炎は、原因や経過によって症状が大きく異なります。
軽度であれば咳や少しの元気消失だけですが、重症化すると呼吸困難になり命に関わることもあります。
2. 主な原因と分類
犬猫の肺炎は原因によっていくつかのタイプに分けられます。
2-1. 細菌性肺炎
もっとも多いタイプで
- パスツレラ菌
- ボルデテラ菌
- マイコプラズマ
- ブドウ球菌
- 大腸菌などが原因になります。
これらは気道に常在している菌が免疫低下時に増殖する場合や、外から感染する場合があります。
2-2. ウイルス性肺炎
- 犬パルインフルエンザウイルス
- 犬ジステンパーウイルス
- 猫カリシウイルス
- 猫ヘルペスウイルス などが原因。
ウイルス感染が先に起こり、その後に細菌感染を併発(混合感染)することが多いです。
2-3. 誤嚥性肺炎
食べ物や吐いた内容物、薬液などが誤って気道に入り肺まで到達することで発症します。
麻酔後、食道疾患(巨大食道症など)、神経疾患で嚥下がうまくいかない場合によく見られます。
2-4. 真菌性肺炎
アスペルギルスやクリプトコッカスなどの真菌(カビ)による感染。
まれですが治療期間が長く、予後も慎重になります。
2-5. 寄生虫性肺炎
肺虫が原因で、外に出る猫や犬で発症することがあります。
駆虫薬が治療の基本です。
3. 発症のメカニズム(病態)
肺炎は大きく分けて以下の経路で発症します。
■ 吸入感染
- 空気とともに病原体を吸い込み、気道から肺に感染が広がる
■ 誤嚥性
- 異物や液体が気道に入り、化学的刺激と細菌感染を同時に引き起こす
■ 血行性
- 体の別の場所で発生した感染が血流に乗って肺に到達
■ 直接感染
- 外傷や手術などで肺が直接病原体にさらされる
炎症が進むと、肺胞内に滲出液(炎症で出る液体)がたまり、ガス交換ができなくなります。
これが呼吸困難や低酸素血症の原因です。
4. 好発年齢・犬種・猫種
■ 年齢
- 子犬・子猫は免疫が未熟でかかりやすく、高齢の犬猫も免疫低下で発症リスクが高い
■ 犬種
- 短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、シーズーなど)は気道構造的に呼吸器感染症にかかりやすい
■ 猫種
- ペルシャなどの短頭種や、外出する猫(野良猫との接触機会がある)がリスク高
■ 基礎疾患
- 心臓病、気管支疾患、免疫抑制治療中の子は特に注意
5. 主な症状
肺炎の症状は軽度から重度までさまざまですが、代表的なものは以下の通りです。
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 咳 |
乾いた咳 または痰が絡んだ湿った咳 |
| 呼吸が早い・苦しそう |
胸やお腹の動きが大きい 口を開けて呼吸する |
| 発熱 | 39.0℃以上の発熱や震え |
| 食欲不振・元気消失 | 活動量の低下 |
| チアノーゼ | 舌や歯ぐきが紫色(重症) |
⚠ 注意
呼吸困難、チアノーゼ、口呼吸は緊急事態です。
すぐに動物病院へ。
6. 診断方法
肺炎を診断するためには、複数の検査を組み合わせます。
■ 聴診
- 肺の雑音や呼吸音の変化を確認
■ レントゲン検査
- 肺の陰影(白く見える部分)の広がりや形を評価
■ 血液検査
- 白血球数や炎症マーカーの測定
■ 酸素飽和度(SpO₂)測定
- 低酸素の有無を確認
■ 気管支肺胞洗浄(BAL)
- 肺内の液体を採取して細菌培養・抗菌薬感受性試験
■ PCR検査
- ウイルスや特定細菌の遺伝子検出
7. 治療方法
7-1. 抗菌薬
細菌性肺炎では第一選択。
培養検査結果に基づき、感受性のある抗菌薬を選びます。
7-2. 酸素療法
呼吸困難時に酸素室やマスクで酸素濃度を上げ、体内の酸素不足を防ぎます。
7-3. 支持療法
■ ネブライザー(吸入療法)
- 痰を柔らかくして排出を促す
■ 点滴
- 脱水予防、全身状態の維持
■ 栄養管理
- 食欲不振時は流動食や場合によって経鼻チューブ等を検討
7-4. 特殊治療
■ 真菌性肺炎
- 抗真菌薬を長期投与
■ 寄生虫性肺炎
- 駆虫薬
■ 誤嚥性肺炎
- 誤嚥の原因治療(食道疾患の手術や食事形態の変更)
8. 入院が必要なケース
✔ 重度の呼吸困難
✔ 酸素投与が必要
✔ 高熱や脱水が強い
✔ 集中的な点滴・注射治療が必要な場合
9. 予後と再発
✔ 早期治療であれば回復率は高い
✔ 基礎疾患がある場合や誤嚥性では再発しやすい
✔ 完全回復には数週間〜数か月かかることもある
✔ 真菌性や慢性肺炎は長期治療・管理が必要
10. 飼い主さんができる予防
✔ 年1回以上の健康診断(心臓・呼吸器チェック)
✔ ワクチン接種(犬:パルインフルエンザ、犬ジステンパー/猫:カリシウイルスなど)
✔ 高齢や持病のある子は誤嚥防止のための食事工夫
✔ 異変を感じたら早期受診
肺炎は早期に治療を始めれば、多くの子が回復できます。
焦らず、でも迷わず、しっかりケアしていきましょう。
「寝ている時の呼吸音がいつもと違う」「運動を嫌がる」「咳が長引いている」 こうした小さな変化も重要なサインです。
📞 気になる症状があれば、お早めに当院までご相談ください。早めの受診が回復への近道です。
