食べない、苦しそう。リンパ腫の進行を整理し、治療方針を選んだセカンドオピニオン
目次
1. リンパ腫の進行を整理し、治療方針を選んだセカンドオピニオン
✔ 「リンパ腫の治療を続けているけれど、急に食べなくなりました」
✔ 「点滴や食欲増進の治療をしても、一時的にしか良くなりません」
✔ 「薬を飲ませようとすると苦しそうで、もうどうしたらいいのか分かりません」
今回は、このようなお悩みで
当院へセカンドオピニオンとして
来院された猫ちゃんの事例をご紹介します。
なお、
個人や動物が特定されないよう、
経過や数値の一部を変更しています。
2. 消化器型リンパ腫の治療中に、急に食べなくなった
この猫ちゃんは、
以前に消化器型リンパ腫と診断され、
手術を受けていました。
その後はプレドニゾロンを
使用しながら経過をみていました。
しばらくは比較的安定していましたが、
受診の1週間ほど前から食欲が低下しました。
そして数日前からは、
ほとんど飲食できなくなっていました。
かかりつけの病院では、
点滴や食欲を上げるための治療を受け、
一時的に食べることもありました。
しかし、
またすぐに食べなくなってしまいました。
さらに、
それまではおやつなどに混ぜて
薬を飲ませることができていましたが、
食べなくなったことで
投薬も難しくなりました。
シリンジで薬を飲ませようとすると、
強いストレスがかかり、
口を開けて苦しそうに
呼吸することもありました。
飼い主さんは、
✔ 「食べさせた方がいいのは分かっている」
✔ 「薬も飲ませなければいけない」
✔ 「でも、無理にやると苦しそう」
という状態で、
どうすればよいのか
分からなくなっていました。
3. 飼い主さんが一番知りたかったこと
今回、
飼い主さんが求めていたのは、
✔ 「もっと食欲を出す薬はないか」
ということだけではありませんでした。
本当に知りたかったのは、
「なぜ今、こんなに食べられなくなっているのか」
ということでした。
✔ 点滴をしても一時的にしか良くならない。
✔ 食欲増進剤を使っても十分には食べない。
✔ 薬も飲ませられない。
この状況で、
✔ 「今までと同じ治療を続けてよいのか」
✔ 「リンパ腫が進行しているのか」
✔ 「まだ治療を強く行うべきなのか」
✔ 「それとも、苦痛を減らすことを優先した方がよいのか」
ということを整理する必要がありました。
4. 当院で確認したこと
当院では、まず現在の体調不良が、
✔ 「単純な食欲低下なのか」
それとも、
✔ 「リンパ腫そのものの進行によるものなのか」
を確認することにしました。
✔ 血液検査
✔ レントゲン検査
✔ 腹部超音波検査
などを行い、全身状態を評価しました。
その結果
✔ 胸部のリンパ節
✔ 特に気管支周囲のリンパ節
が大きくなっている
可能性がありました。
そのリンパ節によって
気道が圧迫され、
呼吸がしづらくなっている
ことが考えられました。
つまり、
✔ 「食べない」
という症状だけではなく、
✔ リンパ腫が消化管だけではなく、ほかの部位にも進行している可能性
を考える状況でした。
5. なぜ投薬すると苦しそうだったのか
飼い主さんは、
✔ 「シリンジで薬を飲ませようとすると、口呼吸をして苦しそうになる」
と話されていました。
最初は、
✔ 「投薬のストレスで苦しくなっているのかな」
とも考えられます。
しかし今回の検査では、
胸部のリンパ節腫大によって
気道が圧迫されている
可能性がありました。
その状態では、
✔ 保定されたり
✔ 口から無理に薬を飲ませたり
することが大きな負担になる場合があります。
今回、
✔ 「薬を嫌がっているだけではなく、そもそも呼吸がつらい可能性がある」
と分かったことは、
とても重要でした。
✔ 「薬を飲ませられないから治療できない」
ではなく、
✔ 「今の状態では無理な投薬そのものが負担になる可能性がある」
ということを、ご家族と共有しました。
6. セカンドオピニオンで整理できたこと
今回、まず大きかったのは、
✔ 「今、この猫ちゃんの体で何が起きている可能性が高いのか」
を整理できたことでした。
✔ 食欲が低下しているから食欲増進剤を追加する。
✔ 脱水しているから点滴する。
✔ もちろん、そうした対症療法も必要です。
しかし、
その背景にリンパ腫の進行が
あるのであれば、
そこを理解したうえで
今後を考えなければなりません。
今回の診察では、
✔ 消化器型リンパ腫が進行している可能性があること
✔ 胸部リンパ節の腫大によって呼吸が苦しくなっている可能性があること
✔ 今後さらに食欲低下や呼吸状態の悪化が起こる可能性があること
✔ 積極的な抗がん剤治療を行う選択肢
✔ 症状を一時的に改善させる治療
✔ 苦痛を減らすことを優先した緩和療法
について説明しました。
7. 治療にはいくつかの選択肢がありました
リンパ腫に対して、
より積極的に治療するのであれば、
CHOP療法などの
多剤併用化学療法を検討することができます。
また、L-アスパラギナーゼという
抗がん剤を使用し、
一時的に腫瘍量を減らすことを
目指す選択肢もあります。
一方で、
✔ 通院回数
✔ 抗がん剤の副作用
✔ 猫ちゃんへの負担
✔ 現在の全身状態
✔ どこまで積極的な治療を希望するか
によっては、強い治療を行わない
という選択もあります。
今回はそれぞれの治療について、
✔ 「何を目的に行うのか」
を分けて説明しました。
✔ 病気そのものをできるだけ抑えるための治療。
✔ 一時的でも症状を改善させるための治療。
✔ そして、病気を治すことよりも、苦痛を少なくして過ごすことを優先する治療。
同じ「治療」でも、目的は異なります。
8. その後の選択
飼い主さんは、
CHOP療法のような積極的な
抗がん剤治療については、
あまり希望されませんでした。
一方で、
✔ 「少しでも今の苦しさを和らげてあげたい」
というご希望がありました。
そこで、
まずL-アスパラギナーゼによる
治療を行うことを選択されました。
その後については、
病気を積極的に抑え込むことよりも、
✔ 苦痛をできるだけ減らしながら過ごすことを優先する緩和療法
を選択されました。
✔ 「何をするか」
を決める前に、
✔ 「今どうなっているか」
を知る
今回、
飼い主さんにとって
一番大きかったのは、
新しい薬が見つかったことだけではありませんでした。
診察後、
✔ 「今の状況が分かったので、そのうえで選ぶことができた」
ということが、
とても大きかったと思います。
病気が進行しているのか
分からない状態では、
✔ 「もっと治療した方がいいのか」
✔ 「無理に薬を飲ませるべきなのか」
✔ 「食べないから、とにかく何か食べさせるべきなのか」
と迷い続けてしまいます。
しかし、
✔ 「今は病気がここまで進んでいる可能性がある」
✔ 「呼吸の苦しさもある」
✔ 「積極的治療にはこういう選択肢がある」
✔ 「緩和療法を選ぶこともできる」
と状況が整理されることで、
ご家族自身が納得して方針を
決められるようになります。
9. セカンドオピニオンは「もっと治療するため」だけではありません
セカンドオピニオンというと、
✔ 「もっと良い治療を探すため」
✔ 「別の病院なら治せるかもしれないから」
受診するものだと
思われることがあります。
もちろん、
そのような目的で
受診されることもあります。
しかし、進行した病気では、
✔ 「これ以上どこまで治療するかを整理するため」
にセカンドオピニオンを
利用することもできます。
✔ 積極的な治療を受ける。
✔ 一時的な症状改善を目指す。
✔ 苦痛を減らすことを優先する。
どの選択にも、
ご家族それぞれの考え方があります。
大切なのは、
✔ 現在の状態を理解したうえで選ぶこと
だと考えています。
10. この事例からお伝えしたいこと
今回の猫ちゃんでは、
食欲がなくなったことをきっかけに
セカンドオピニオンを受診されました。
しかし、詳しく調べることで、
「単に食欲が落ちている」のではなく、
リンパ腫の進行によって、
食欲低下だけでなく呼吸にも
影響が出ている可能性が分かりました。
そしてその情報をもとに、
✔ 強い抗がん剤治療を行うのか
✔ 一時的な症状改善を目指すのか
✔ 緩和療法を中心にするのか
をご家族と一緒に整理しました。
結果として選ばれたのは、
最も強い治療ではありませんでした。
ご家族が選ばれたのは
✔ 状況を知らないまま治療を続ける方針ではなく
✔ 現在の状態を理解したうえで選ぶこと
でした。
セカンドオピニオンの価値は、
必ずしも診断が変わることや、
新しい治療が見つかることだけではありません。
✔ 「今、何が起きているのか」
✔ 「これから何が起こる可能性があるのか」
✔ 「どのような選択肢があるのか」
を理解し、
その子とご家族にとって
納得できる方針を選ぶこと
にも大きな意味があります。
✔ 「治療を続けているけれど、だんだん状態が悪くなっている」
✔ 「これ以上どこまで治療するべきか分からない」
✔ 「積極的治療と緩和療法のどちらを選べばよいか迷っている」
✔ 「今の状況を一度きちんと整理したい」
そのような場合も、
セカンドオピニオンを利用する
一つのタイミングです。
